日本大百科全書(ニッポニカ) 「スールダース」の意味・わかりやすい解説
スールダース
すーるだーす
Sūrdās
(1478ころ―1580ころ)
インドのブラジバーシャー語詩人、歌手。熱烈なクリシュナ信徒。家貧しく盲目だったためひとりヤムナー河畔に住み、詩人、歌手として名声を得ていたが、1510年バッラバ師に会い教えを受けて詩境ますます冴(さ)え、シュリーナート寺院の楽士として即興のクリシュナ賛歌を歌った。詩は聖典『バーガバタ・プラーナ』、とくにその第10章に基づきクリシュナ神の行跡をたたえたもので、幼童クリシュナの戯れ、これを見つめる周囲の人々の愛情、幼童クリシュナの冒険・危難と母親の心配、ラーダーとクリシュナの純愛、別離の悲しみなどを歌って叙情詩の世界的傑作と称され、爾後(じご)インド文学に多大な影響を与えた。詩集を『スールサーガル』(スールの海)といい、多数の写本があるが、19世紀以後編集が進められ、ナワルキショール社版(1920)、ナーガリー・プラチャーリニー・サバー・カーシー版(1934)などが一般に用いられている。
[土井久弥]