日本大百科全書(ニッポニカ) 「セナガキダイ」の意味・わかりやすい解説
セナガキダイ
せながきだい / 背長黄鯛
pink dentex
[学] Cheimerius gibbosus
硬骨魚綱スズキ目タイ科キダイ亜科に属する海水魚。ジブラルタル海峡からアンゴラまでの西アフリカ、カナリー諸島、地中海、ポルトガルなどの沿岸に分布する。体はすこし長い卵形で、側扁(そくへん)する。頭の前部外郭は若魚では一様に湾曲し、成魚では著しく盛り上がる。眼下幅はおよそ眼径に等しい。両眼間隔域は隆起する。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下までか、あるいはそれよりわずかに越える。両顎に数列の犬歯状の歯がある。外列歯は他の列のものより強く、上下両顎の前部の4~6本はもっとも強い。背びれは12棘(きょく)10~11軟条で、第1棘と第2棘はきわめて短い。第3~4棘はもっとも長く、若魚では糸状に伸長する。臀(しり)びれは3棘7~9軟条。腹びれの第1軟条は糸状に伸長する。頬(ほお)は鱗(うろこ)をかぶり、前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)に小鱗(しょうりん)がある。体は青銀色の輝きのある赤色。頭部は暗赤色で、腹部は淡赤色。背びれの後端基部に小さい黒点がある。胸びれの腋部(えきぶ)は暗褐色である。鰓孔(さいこう)の上角部に暗色域がある。背びれの軟条部に1~2本の暗色線が水平に走る。尾びれは赤色で、後縁は黒い。大きな個体では体は暗赤色で、雄には頭部に黒点があり、雌では灰色がかっている。体長は最大で約100センチメートルになるが、普通は60センチメートルのものが多い。水深20~220メートルの岩礁を取り巻く砂、礫(れき)、岩底に生息する。若魚は沿岸に多くみられるが、成魚は沖合いの大陸棚斜面付近に生息する。おもに甲殻類、魚類、頭足類などを食べる。雄性先熟型の雌雄同体魚で、50センチメートルぐらいまでは雄で、その後雌に性転換する。釣り(成魚)、底引網(若魚)などで漁獲される。1960~1970年にかけて、日本のトロール船が漁獲したものが多量に陸揚げされ、ヒレダイ、ヒレコダイ、ニシキダイなどの商品名で流通した。マダイの代替品として、焼き魚に利用された。セナガキダイ属には日本からホシレンコが知られている。
[尼岡邦夫 2018年3月19日]