センニンコク(その他表記)love-lies-bleeding
Amaranthus caudatus L.

改訂新版 世界大百科事典 「センニンコク」の意味・わかりやすい解説

センニンコク (仙人穀)
love-lies-bleeding
Amaranthus caudatus L.

食用および観賞用として栽培されるヒユ科ヒユ属の一年草。別名ヒモゲイトウ(老鎗穀)。南アメリカの原産で,前4000年ころから山岳地帯で栽培されていたという。観賞用として世界各国で栽培されているが,食用とされるのは,そのうちのいくつかの系統品種群であると思われる。19世紀にネパールインド山岳地帯さらにアフリカに伝えられ,主食用の作物となっている。草丈は1~2m。花穂が房になって長く下垂し,色彩,形態の変化に富む。種子はやや扁円形で,長さ約0.8mm。きわめて小粒で,赤・黒色などを呈して美麗である。食用のセンニンコクは日本でも小規模ながら各地で栽培されており,現在も岩手県の一部でアカアワと称して栽培されている。種子の胚乳デンプンを含み(約63%),蒸してからついて餅にする。粒を米に混ぜて(1~2%)炊くと冷えても味がよいとされる。ネパールなどでは,いってから粉にしてパン状に焼いて食べる。

 中南米原産で,種子を穀物として利用するヒユ属植物はほかにもよく似たものがあり(一括してgrain amaranthusと呼び,これにセンニンコクの名称を当てる場合もある),そのなかでもA.hypochondriacus L.はメキシコグアテマラとインドで栽培されている。またA.cruentus L.やA.hybridus L.も中央アメリカやインドで栽培されているという。これらヒユ属の穀類として利用する種の関係についてはまだ明らかでない点も多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「センニンコク」の意味・わかりやすい解説

センニンコク
せんにんこく / 仙人穀

ヒユ科(APG分類:ヒユ科)の一年草であるヒモゲイトウの仲間で、果実を食用とするものの総称仙人の食べ物という意味でセンニンコクの名があるが、英名ではグレイン・アマランサスgrain amaranthusという。おもに栽培するのはアルゼンチンのアンデス山脈周辺原産のヒモゲイトウAmaranthus caudatus L.とメキシコ南部から中央アメリカ原産のA. cruentus Willd.およびメキシコ南西部原産のA. hypochondriacus L.の3種である。原産地では紀元前4000年ころから山岳地帯で栽培された。19世紀初めにインドに伝えられ、ネパールでは重要な作物となっており、アジア各地で栽培されている。また東アフリカでも若干の栽培がある。南アメリカでは古代から種子を炒(い)ったり、また粉にしてパン状に焼いたりして食べている。ネパールでもほぼ同様の食べ方である。日本へは明治時代に伝来したらしく、小規模ながら各地で栽培されたが、現在は岩手県の一部でアカアワと称して栽培されている。

 茎は高さ1~2メートル、上部は数本に分かれ、夏から秋に、ヒモゲイトウA. caudatusは赤や紫または緑色の紐(ひも)状の花穂をつけ、A. hypochondriacusは赤、紫、淡黄緑色の直立した穂をつける。種子はどの種もやや扁円(へんえん)形で長さ0.8ミリメートルときわめて小さく、主として白色であるが赤色のものもある。種子の胚乳(はいにゅう)には36%のデンプンを含み、タンパク含量は15%で、とくにリジンに富む。センニンコクを混ぜた米は冷えても味がよいとされ、岩手県地方では普通は米に混ぜて炊く。葉はひたし物や汁の具とする。

[星川清親 2021年2月17日]

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百科事典マイペディア 「センニンコク」の意味・わかりやすい解説

センニンコク

ハゲイトウ

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世界大百科事典(旧版)内のセンニンコクの言及

【ヒユ】より

…【矢原 徹一】。。…

【ヒユ】より

…ホナガイヌビユは全草薬用となり,解熱剤,解毒剤に用いる。しばしば栽培されるものにセンニンコクA.caudatus L.(英名Inca wheat,love‐lies‐bleeding)とスギモリゲイトウA.paniculatus L.がある。いずれも熱帯アメリカ原産。…

【ヒユ】より

…ホナガイヌビユは全草薬用となり,解熱剤,解毒剤に用いる。しばしば栽培されるものにセンニンコクA.caudatus L.(英名Inca wheat,love‐lies‐bleeding)とスギモリゲイトウA.paniculatus L.がある。いずれも熱帯アメリカ原産。…

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