日本大百科全書(ニッポニカ) 「センニンコク」の意味・わかりやすい解説
センニンコク
せんにんこく / 仙人穀
ヒユ科(APG分類:ヒユ科)の一年草であるヒモゲイトウの仲間で、果実を食用とするものの総称。仙人の食べ物という意味でセンニンコクの名があるが、英名ではグレイン・アマランサスgrain amaranthusという。おもに栽培するのはアルゼンチンのアンデス山脈周辺原産のヒモゲイトウAmaranthus caudatus L.とメキシコ南部から中央アメリカ原産のA. cruentus Willd.およびメキシコ南西部原産のA. hypochondriacus L.の3種である。原産地では紀元前4000年ころから山岳地帯で栽培された。19世紀初めにインドに伝えられ、ネパールでは重要な作物となっており、アジア各地で栽培されている。また東アフリカでも若干の栽培がある。南アメリカでは古代から種子を炒(い)ったり、また粉にしてパン状に焼いたりして食べている。ネパールでもほぼ同様の食べ方である。日本へは明治時代に伝来したらしく、小規模ながら各地で栽培されたが、現在は岩手県の一部でアカアワと称して栽培されている。
茎は高さ1~2メートル、上部は数本に分かれ、夏から秋に、ヒモゲイトウA. caudatusは赤や紫または緑色の紐(ひも)状の花穂をつけ、A. hypochondriacusは赤、紫、淡黄緑色の直立した穂をつける。種子はどの種もやや扁円(へんえん)形で長さ0.8ミリメートルときわめて小さく、主として白色であるが赤色のものもある。種子の胚乳(はいにゅう)には36%のデンプンを含み、タンパク含量は15%で、とくにリジンに富む。センニンコクを混ぜた米は冷えても味がよいとされ、岩手県地方では普通は米に混ぜて炊く。葉はひたし物や汁の具とする。
[星川清親 2021年2月17日]