ハゲイトウ(英語表記)Joseph’s-coat
fountain plant
Amaranthus tricolor L.(=A. gangeticus L.)

改訂新版 世界大百科事典 「ハゲイトウ」の意味・わかりやすい解説

ハゲイトウ
Joseph’s-coat
fountain plant
Amaranthus tricolor L.(=A. gangeticus L.)

夏の終りから秋にかけて,葉が美しく着色する熱帯アジア原産のヒユ科一年草食用にされるヒユから観賞植物として選抜育成された。茎は太く直立して1~2mになり,多数の葉をつけるが,花芽分化と同時に枝先の葉が着色する。着色期には,黄色,鮮紅色,淡紅色,紫紅色などの色彩があらわれる。花は小さく,葉腋ようえき)に多数群がって球状につく。変種ヤナギバハゲイトウ(別名ホソバハゲイトウ)var.salicifolius Hort.は高さ約1m,葉は細長く波打って垂れ,葉色は暗赤紫色。着色葉は鮮紅色または橙黄色となる。

 ハゲイトウの園芸品種で著名なものにモルテン・ファイヤーMolten Fireがあり,正常葉は栗色,着色葉は緋紅色がかかり,上部の葉は緋紅色の単色となる。また正常葉は緑色,着色葉が黄色のものもある。種まきは4月,日当りのよい腐葉質の多いところによく育つが,移植を嫌うので直まきする。肥料は腐熟堆肥を十分に入れ化成肥料などを与えるが,あらかじめ土に混入しておくのがよい。育苗中乾燥しすぎると草丈が伸びないうちに花がつき,葉が着色する。花芽分化は短日であるから,温室で2~3月にまけば小鉢でも葉が着色する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハゲイトウ」の意味・わかりやすい解説

ハゲイトウ
はげいとう / 葉鶏頭
[学] Amaranthus tricolor L. var. tricolor

ヒユ科(APG分類:ヒユ科)の春播(ま)き一年草。インド、熱帯アジア原産。茎は直立し、高さ1~1.5メートル。葉は細長い披針(ひしん)形で、初めは緑色または褐色であるが、8月ころから頂部の葉が美しく色づく。ガンが飛来するころ葉が色づくとして、ガンライコウ雁来紅)の名がある。花はごく小さく、葉腋(ようえき)に球状に群生する。一般には属名のアマランサスの名でよばれ、観葉植物として次の各種がよく栽培される。ヤナギバケイトウ(柳葉鶏頭)、ニシキバケイトウ(錦葉鶏頭)は葉が細く、赤桃色に色づく。アーリースプレンダーは下部の葉は褐色、上部の葉は鮮紅色となる。また、トリカラーパーフェクタは上部の葉は鮮紅色と黄色の複色となり、下部の葉は緑色である。

 耐寒性はないが生育は旺盛(おうせい)で、栽培は容易である。土質は選ばず、日当りのよい所でよく育つ。5月ころ直播(じかま)きする。移植は好まないが、移植する場合は本葉が5~7枚のころ行う。葉の発色を早めるには根切りをするとよい。また、約20センチメートル間隔で密植すると生育が抑制されて草丈が低くなり、発色も早まる。

[金子勝巳 2021年2月17日]


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百科事典マイペディア 「ハゲイトウ」の意味・わかりやすい解説

ハゲイトウ(葉鶏頭)【ハゲイトウ】

熱帯アジア原産のヒユ科ヒユ属(アマランサス)の一年草。春じかまきして,秋の花壇で美しく着色した葉を観賞する。茎は直立し,1.5mほどになり,夏〜秋,葉腋に淡緑または淡紅色の細かい花を密につける。葉の形は幅の広いものや細長くよじれたものなど変化が多い。葉色は紅・紫,黄・緑の2色種,紅・黄・緑の3色種,紅・黄・緑・紫の4色種の別がある。高温多湿を好む。このほか同じ属のヒモゲイトウ(センニンコクとも)は米国やアフリカの熱帯原産で,ひも状に垂れ下がる紅や黄緑色の太い花穂に観賞価値がある。東南アジアなどでは種子を食用,飼料用とする。同様に花穂を観賞する種にアマランサス・ヒポコンドリアクスがある。栽培起源の種といわれ,花穂は直立する。濃赤紫色や緑色の花穂をつける園芸品種が栽培されている。
→関連項目ケイトウ(鶏頭)ヒユ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハゲイトウ」の意味・わかりやすい解説

ハゲイトウ(葉鶏頭)
ハゲイトウ
Amaranthus tricolor; Joseph's coat

ヒユ科の一年草で,熱帯アジア原産。古くから観賞用として庭園に栽培されるもので高さ1~2m,茎は直立し,無毛で多数の葉をつける。葉の形は一定せず,通常は卵円状長楕円形または披針形。初夏の頃までは緑葉であるが,8月頃から頂部の葉から黄色,紅色,オレンジ色などの美しい色に変る。葉腋に球状に密集した多数の小花をつける。個々の花は淡緑色で小さく萼片は3個,卵状披針形,長さは 3mm,花弁はない。おしべ3本,めしべ1本があり,果実は熟すると横に裂け目が入って上部が帽子のように取れ,中から1個の黒い種子が出る。改良が重ねられ園芸品種はきわめて多い。

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世界大百科事典(旧版)内のハゲイトウの言及

【ヒユ】より

…【矢原 徹一】。。…

【ヒユ】より

…若い植物体は熱帯域で広く野菜として食用にされる。ハゲイトウはこれから育成された,花序がすべて腋生となる栽培の系統で,葉形や葉の色彩にはいろいろな変異型がある。葉を観賞するために頂生花序の退化した系統が選抜されたものと思われる。…

※「ハゲイトウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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