タイ文学(読み)タイぶんがく

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タイ文学」の意味・わかりやすい解説

タイ文学
タイぶんがく

タイ文学はほぼ 13世紀末スコータイ朝時代から始る。古典文学の主流は詩で,初期の宗教譚,史譚をはじめ,中期のロマンス戯曲もすべて韻文で書かれた。これは声調言語であるタイ語の性質と,元来歌の好きなタイ民族の性格の反映とみられる。各種の詩形式があり,韻律法はサンスクリットのそれを模して複雑で,このため作者は宮廷に仕える貴族や学者に限られた。文学は伝統的に王朝中心に展開し,庇護者であった歴代の王のなかにもすぐれた詩人がいる。 17世紀アユタヤ朝には詩の全盛時代を迎え,『プラ・ロー』『カムスワン』などの名作が生れた。タイ文学全般にインド古典文学の影響が濃く,たとえば『ラーマーヤナ』やジャータカなどが摂取,翻案された。 18世紀に発生した舞劇もインドその他の外国説話に題材を得ている。一方タイ固有の文学は民話民謡の形で保たれてきたが,19世紀なかばに初めて土着のリアルな韻文小説『クンチャーン・クンペーン』が現れた。同じ頃,中国の『三国志演義』が翻案されて『サーム・コック』となり,最初の散文形式が誕生した。 20世紀に入ると,西欧流教養を身につけた知識人が相次いで近代的小説を書くようになった。やがて詩の伝統はほとんど失われ,通俗小説が盛んになり,新聞雑誌に作品が掲載されてベストセラーとなり,文学賞が与えられるなど,作家職業として成り立つこととなった。これに対し,進歩的な若い世代層が詩の復権を唱えたり,社会小説や思想小説を書きはじめ,「ルン・マイ (新世代) 」の作家が活躍。 1989年にはチラナン・ピットプリーチャーの詩集『消えた木の葉』が東南アジア文学賞を受賞した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイ文学」の意味・わかりやすい解説

タイ文学
たいぶんがく

東南アジア文学

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