改訂新版 世界大百科事典 「タカリー族」の意味・わかりやすい解説
タカリー族 (タカリーぞく)
Thakali
ネパール・ヒマラヤ中央部,カリ・ガンダキ川上流部の深い谷間タコーラ地方を故郷とし,チベット・ビルマ語派に属する言語を話す民族。人種的にはモンゴロイドの特徴が強い。人口約数千とも1万ともいわれる少数民族であるが,商業民として名高い。かつては,チベット方面から岩塩や牧畜生産物を入手し,ネパール南部やインド方面に輸出し,逆に米,麦など農作物や工業製品をそこから買って,チベットへ輸出して富をなした。1959年のチベットにおける暴動によって,多数の難民が流入したりヒマラヤ貿易が中断したため,タカリー族の多くが首都であるカトマンズなどの南方都市に移住した。これらの地でも,ほとんどの者が,今日では,経済的にはきわめて裕福な生活を送っている。だがタカリー族社会は,急速な都市化のために内外で深刻な文化摩擦を起こしている。
執筆者:飯島 茂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報