チベット高原(読み)チベットこうげん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チベット高原」の意味・わかりやすい解説

チベット高原
チベットこうげん
Tibet

中国西部のチンハイ(青海)省チベット自治区にかけて広がる高原地帯。チベット語ではプー bod,漢語ではシーツァン(西蔵)高原,チンツァン(青蔵)高原という。南はヒマラヤ山脈,北はクンルン(崑崙)山脈とその支脈アルトゥン(阿爾金)山脈チーリエン(祁連)山脈に挟まれ,東はホントワン(横断)山脈,西はカラコルム山脈に達する。平均標高は 4000m前後で,北西部に広がるチャンタン(羌塘)高原の平均標高は 4500mをこえる。西方パミール高原とともに世界の屋根と称される。クンルン山脈とその諸支脈,タンラ(唐古拉)山脈アーリンシャン(阿陵山)山脈カンティセ(岡底斯)山脈など,標高 5000mをこえる多数の東西方向の山脈がある。山峰の万年雪氷河は,アジア大陸東部の大河の水源となっており,ホワン(黄)河チャン(長)江メコン川タンルウィン川ガンジス川インダス川などの源流が流出する。寒冷乾燥気候であるが,日照と溶融水に恵まれるため,数百に上る内陸湖のほとりには牧草が茂り,ヤクヒツジなどが放牧されている。農作物としてはチンクオと呼ばれるハダカムギと,ユワンケン(円根)と呼ばれる丸ダイコンが比較的広く栽培されるほか,北東部のホワン河の谷や南部ヤルン川の谷を中心に水稲コムギなどが導入されている。地下資源は豊富で,特にツァイダム(柴達木)盆地石油(→ツァイダム〈柴達木〉油田)は有名であり,タブサン(達布遜)湖ツァカ湖などでは塩が採取される。交通が不便なため長い間秘境とされていたが,中華人民共和国成立後,自動車道路が開通し,鉄道と定期航空路がラサ(拉薩)特別市まで開かれた。地質学上の調査が大規模に進められており,地熱資源の広範な存在が明らかになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チベット高原」の意味・わかりやすい解説

チベット高原
ちべっとこうげん / 西蔵高原

中国、チベット自治区全域に広がる世界最大の高原。平均標高4500メートル。青海(せいかい/チンハイ)省全域と四川(しせん/スーチョワン)省西部、雲南(うんなん/ユンナン)省北西部などを含む青蔵(せいぞう)高原の主要部分をなす。崑崙(こんろん/クンルン)、カラコルムヒマラヤ、横断、タングラなどの山脈に囲まれ、ガンディセ山脈、ニェンチェンタンラ山脈などが高原内を東西に走る。インダス川やメコン川など大河の発源地でもある。北部の蔵北(ぞうほく)すなわちチャンタン高原にはナム湖やバンゴン湖など湖沼が多く、気候も乾燥し寒冷地砂漠が発達する。南部のヤルンズアンボ峡谷では河谷平野がみられ、集落も発達、南東部の谷地ではインド洋の季節風が吹き込み、温暖湿潤型の気候を示し、メドッ(メト)などでは米作も行われている。

[駒井正一]

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