日本大百科全書(ニッポニカ) 「タラスコ」の意味・わかりやすい解説
タラスコ
たらすこ
Tarasco
メキシコ中西部、ミチョアカン州北部の火山性高原に住む人々。言語はタラスコ語。現在ではスペイン語を話せる者が多くなっているが、地域によってはタラスコ語しか話せない人がほとんどである。生業は農業で、トウモロコシ、カボチャ、豆類を栽培し、ヒツジ、ブタ、ニワトリなどを飼う。ウシに犂(すき)を引かせ、掘り棒を使って種を播(ま)く。そのほか、魚や動物をとり、また農園などで賃金労働を行う。板、または日干しれんがの壁の家に夫婦とその未婚の子供が住む。ときには父と結婚した息子とが一つの屋敷内に住み、経済活動を共同で行うこともあるが、一般的には核家族が基本的な社会単位である。村は数十~数百人からなり、いくつかの村がムニシピオ(自治体)を構成する。各ムニシピオは独立の政治的自治組織をもつ。出自は父系。結婚後、夫婦はたいてい最初の子が生まれるまでは夫の父の家に住み、その後、新しい家を建てて移る。相続は原則として男女の区別なく均等になされる。ラテンアメリカに広くみられるコンパドラスゴとよばれる儀礼的親族関係(洗礼を受ける者とその代父母との関係)は、タラスコ人にとって宗教的にだけでなく社会的にもきわめて重要である。宗教は土着化したキリスト教。聖人、とくにムニシピオの守護聖人の祭りは盛大に行われる。
[板橋作美]