日本大百科全書(ニッポニカ) 「たわし」の意味・わかりやすい解説
たわし
鍋(なべ)、釜(かま)、食器などの汚れを落とすための用具。初めは荒縄、束ねた稲藁(いなわら)やカヤの根、シュロの皮、ヘチマなどが用いられた。現在も使われている亀(かめ)の子たわしは、1907年(明治40)に東京の西尾正左衛門(しょうざえもん)(1876―1953)によって考案された(翌年に実用新案取得)。これは、シュロの茎の繊維を束ね、2本の針金で撚(よ)って両端をつないだもので、握りやすく、じょうぶで長もちしたので、従来のたわしにかわって広く普及した。
最近は、たわしの材質や形も種類が豊富になっている。亀の子たわしには、前出の植物性の材質のほかに、プラスチックを繊維状にしたものを使ったものもある。金属製としては、アルミニウムやステンレスを細く切って螺旋(らせん)状にしたものをまとめた金たわしや、鉄をウール状に細く切ってまとめたスチールウールのものなどがある。そのほか、スポンジ類やナイロン、ポリエチレン類を各種の形に加工したものがある。
たわしは、器具の種類や汚れに応じて使い分けることがたいせつである。とくに、器具や食器を傷つけぬよう、これらの硬度より低い硬度の材質のたわしを使う。たとえば、焦げ付いた鍋や汚れのひどいガス台、さびの出たものには金属性たわしを、食器類にはスポンジ類を使うなどである。
[河野友美]