翻訳|Tarzan
アメリカの作家エドガー・ライス・バローズが冒険小説「ターザン・シリーズTarzan Saga」で創造した主人公。第1作『類猿人ターザン』(1914)に始まり、全26巻。イギリス貴族グレイストーク卿(きょう)夫妻は任地のアフリカ行きの途次、船の難破によってアフリカ西海岸に漂着、男の子が生まれるが夫妻は没し、その息子(ターザン)は雌(めす)の大猿カーラに育てられて、ジャングルの王者となる。やがて文明国の探検隊と接触して教育を受け、自分の素性を知り、いったんイギリス貴族の生活に入ってアメリカ娘ジェーンと結婚するが、文明の虚飾を嫌ってアフリカの密林暮らしを続ける。以下、ターザンが活躍するアフリカは、土着の蛮族のほか、アトランティス大陸に由来する失われた種族や文明都市が点在する幻想的大陸で、彼の足跡はさらにヨーロッパから地底世界ペルシダーにまで広がっていく。作品は同工異曲で反覆が多いが、ファンタジー色の強いものが比較的充実している。
[厚木 淳]
ターザンの名は、ハリウッドで映画化されて世界的に有名になった。その第一作はサイレント時代の『ターザン』(1918)で、初代ターザン役者はエルモ・リンカーンElmo Lincoln(1889―1952)であった。1930年代になって6代目ターザン、ジョニー・ワイズミューラーJohnny Weissmuller(1907―1984)が『類猿人ターザン』(1932)など12作に主演したが、いずれも密林の王者ターザンとその一家の冒険活劇で、原作のおもかげはない。1983年、イギリスの映画監督ヒュー・ハドソンHugh Hudson(1936―2023)によって、原作の第一作の忠実な映画化『グレイストーク――ターザンの伝説』がつくられて改めて注目された。
[畑 暉男]
『高橋豊訳『類猿人ターザン』(ハヤカワ文庫)』
アメリカの小説家E.R.バローズが1912年雑誌《オール・ストーリー》に発表した冒険小説の主人公。単行本としては第1作《類猿人ターザン》(1914)以下26冊の長編がある。ターザンの本名はクレートンJohn Clayton。植民地担当官であるイギリスの貴族グレーストーク卿 Lord Greystokeの息子として,1888年11月22日アフリカの西海岸で生まれる。幼くして両親を失い,類人猿に育てられ〈ジャングルの王者〉となる。ターザンとは類人猿の言葉で〈白い皮膚〉の意。ターザンは自然と文明双方の美質を兼ねそなえているものの,そのどちらにも属することのできない人間として描かれ,口数が少なく無愛想で孤独な印象を与える。1918年エルモ・リンカン主演で初めて映画化されて以来,たびたび映画化され,32年にはオリンピック水泳チャンピオンのジョニー・ワイズミュラー主演でターザンの人気は決定的となる。漫画化も1929年のハロルド・フォスター以降,多くなされている。原作とは異なり,自然人としての栄光に輝くターザン像は,映画・漫画化によってつくられたものである。なお,原作者バローズは一度もアフリカへ行ったことはない。
執筆者:小野 耕世
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…アメリカの小説家。富と名声を求めて転々と職を変えたがことごとく失敗,1912年《猿人ターザン》を書いて一躍人気作家となり,以後26冊のターザン物を書いた。これは映画化や漫画化もされ,主人公たる野生の高貴な人間ターザンは20世紀最大の大衆的ヒーローになった。…
…18世紀以降では,ディドロやルソーが未開あるいは自然状態の社会を賛美したことにより,野人にはアメリカ・インディアンなどとともに〈高貴なる野蛮人〉〈善良なる野蛮人〉のイメージが加わった。近くは一連のターザン物がこの系譜の中にあるといえよう。なお最近,中国において〈野人〉の発見ないし捕獲のニュースがしばしば報じられ,いわゆる〈雪男〉の話題も依然として根強いなど,野人伝説はヨーロッパに限らず東洋でも生き続けている。…
※「ターザン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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