日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダマジカ」の意味・わかりやすい解説
ダマジカ
だまじか
fallow deer
[学] Cervus dama
哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目シカ科の動物。ファロージカともいう。同科ダマジカ亜属の中形のシカで、体長130~140センチメートル、肩高80~90センチメートル、体重30~85キログラム。体つきはがっしりしている。角(つの)がほかのシカと異なり、第3枝が手のひら状に広がっている。夏毛は赤褐色に小白斑(はくはん)を有するが、冬毛では灰褐色となり、白斑は消える。環境適応力に富み、原産地のヨーロッパや小アジアのほか、アメリカ、アフリカ南部、オーストラリア、ニュージーランドなどに移入され、各地で増殖している。人為的な繁殖の結果、白色や黒色のものもある。ヨーロッパの公園では、もっとも普通にみられる動物の一つである。発情期は10月、7~8か月の妊娠期間を経て、初夏に普通1子、ときに2、3子を産む。寿命は15年ほどである。
ダマジカ亜属にはヨーロッパに広く産するダマジカのほかに、イランダマジカC. mesopotamicaがある。ダマジカより体格は大きく、肩高105センチメートルになり、体重200キログラムに達する。角はやや平たいが、ダマジカのように手のひら状にならず、枝分れしている。かつてはシリア、パレスチナ、イラク、エチオピア北部にまで分布したが、現在はイラン南部の限られた地域に少数が生息しているだけである。
[増井光子]