日本大百科全書(ニッポニカ) 「チチュウカイミバエ」の意味・わかりやすい解説
チチュウカイミバエ
ちちゅうかいみばえ / 地中海実蠅
Mediterranean fruit fly (略称Medfly)
[学] Ceratitis capitata
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群ミバエ科に属する昆虫。体長4.5~5ミリメートル、翅長4.5ミリメートル。色彩に富んだ美麗種で、体は主として黄褐色。上眼縁剛毛は雄では1対で太く、その先端に近い2分の1は扁平(へんぺい)になって菱(ひし)形に広がるのが特徴であり、雌では単純な2対。胸部背面は小楯板(しょうじゅんばん)を含めて光沢ある黒色で、灰白色粉よりなる特異な斑紋(はんもん)がある。はねは幅広く、透明で黄褐色ないし褐色の帯紋と、濃褐色の点紋からなる斑紋があり、はねの基部に近く、亜前縁脈の下方には、平行した線状の斑紋が認められる。脚(あし)の剛毛は雄では黄褐色で、前脚腿節(たいせつ)の背面および腹面にはとくに発達している。
本種は各種の生果実の害虫として世界的にもっとも悪名が高く、熱帯から温帯にかけての定着地のほか日本を含む未侵入の地域からもっとも警戒されている。地中海沿岸、アフリカ、東部オーストラリア、南アメリカに広く分布するが、原産地は熱帯アフリカと推定されている。北アメリカへは過去に何度か侵入し、そのつど防除されるという事態を繰り返している。卵は乳白色のバナナ形で、長さ1ミリメートル。幼虫は皮を剥(は)いだタケノコ形の無頭のウジで、乳白色であるが、老熟すると約10ミリメートルで黄色となり、長さ3.5~5ミリメートルの褐色ないし暗褐色の囲蛹(いよう)となる。生活史は気温で著しく左右され、ハワイでは1年12世代、パリでは1年1世代を繰り返す。幼虫の加害植物は、果皮の堅い果実(パイナップルとココヤシ)を除くあらゆる果実に及ぶといわれるように、45科143種もの植物が記録されている。
[伊藤修四郎]