ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チュウゴクモクズガニ」の意味・わかりやすい解説
チュウゴクモクズガニ
Eriocheir sinensis; Chinese mitten crab
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日本産のモクズガニによく似た甲殻綱イワガニ科のカニで,甲幅8cmに達する大型種。かつてはシナモクズガニと呼ばれた。形態的にはモクズガニに酷似しており,やはりはさみ脚の掌部に軟らかい毛の房がある。額縁と甲の前側縁の突起がいずれも鋭くとがっていることにより区別がつく。韓国の黄海沿岸の忠清南道付近でモクズガニと分布の境を接し,その他中国全土の河川やクリークに広く分布している。1913年にドイツのオーデル川で最初の1個体が捕獲されたときには,すでに大繁殖が始まっていたものらしく,今日ではオランダやフランスなどヨーロッパ各国に広まっている。中国からヨーロッパへの移住は黄河か長江(揚子江)から船のバラストタンクに入った幼ガニが運ばれたものと考えられるが,アメリカから日本へ入ったアメリカザリガニとともに,甲殻類の移住の好例としてあげられることが多い。韓国ではしょうゆ漬,中国では老酒(ラオチユウ)に漬けて食べるが,モクズガニと同様に肺吸虫症を引き起こすウェステルマン肺吸虫の第2中間宿主であるので注意を要する。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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