改訂新版 世界大百科事典 「ツノゴケ」の意味・わかりやすい解説
ツノゴケ
hornwort
Anthocerotae
コケ植物の1綱。配偶体は緑藻類に,また胞子体は原始的なシダ植物に共通する特徴をもち,陸上植物の起原にかかわる系統上の重要な位置をしめる。配偶体は葉状で構造は単純,内部にラン藻類が共生する。各細胞は1個または数個の大型の葉緑体をもつ。造卵器は裸出せず組織内にうずもれている。仮根は単細胞。胞子体は細長く円柱状で先端はとがる(ツノゴケの名は胞子体のこの形状に基づく)。基部に宿存する分裂組織によって生長を続ける。蒴(さく)(胞子囊)は胞子体の大部分をしめ,その中央には軸柱という支持組織が縦走している。蒴壁は緑色で一般に気孔をもつ。蒴の内部には胞子とともに弾糸がある。蒴は先端からしだいに下方に向かって2片に裂開する。世界に6属約200種,日本に6属16種がある。ニワツノゴケPhaeoceros laevis (L.) Prosk.は世界中に広く分布し,陰湿な土上に生育する。配偶体は暗緑色で,直径3~5cmのロゼットをなし,胞子体は高さ3~6cm,胞子は黄色である。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報