ティモシェンコ

百科事典マイペディア 「ティモシェンコ」の意味・わかりやすい解説

ティモシェンコ

ウクライナの政治家。1960年,旧ウクライナ・ソビエト社会主義共和国,ドニプロペトロウシク市に生まれる。父はラトビア人,母はロシア人。ソ連崩壊後,エネルギー関連企業を経営,ロシアからウクライナへの天然ガスの最大の輸入・卸業企業の経営者として成功,〈ガスの王女〉と呼ばれた。1996年政界に進出国会議員に選出され,ユシチェンコ内閣で副首相。その後野党に転じ,中道・民族主義的主張を強め,2004年の大統領選挙で,親西欧派のユシチェンコを支持し,親ロシアで与党のヤヌコーヴィッチと対立した。大統領選ではヤヌコーヴィッチが勝利したが,ユシチェンコ派は不正選挙が行われたとして,ゼネストを含む大規模な抗議行動を展開,この抗議活動はオレンジをシンボルカラーとしたためオレンジ革命と呼ばれ,先頭に立ったティモシェンコは西欧のメディアからオレンジ革命のジャンヌ・ダルクと称えられた。オレンジ革命後のウクライナの政治は親ロシア派,親西欧派,民族主義派が拮抗し不安定な状況が続いたが,ティモシェンコはしたたかな政治手腕民衆迎合的な政治姿勢で2度首相に任命された。しかし2010年の大統領選で親ロシアのヤヌコーヴィッチに敗れ,さらに2011年10月,職権乱用罪で有罪判決を受け禁固刑を科せられた。服役中の2012年4月,看守からの暴行を受けハンストに入った写真をウクライナの記者がウクライナ議会の人権委員を通じてEU諸国の外交官に配信し,強権的な性格を強めているヤヌコーヴィッチ政権への反感も加わって,ドイツなどで,ウクライナで開催されるサッカーヨーロッパ選手権をボイコットすべきという世論が起こる事態となった。2013年11月ヤヌコーヴィッチ大統領がEUとの政治・貿易協定の調印を見送ったことから,親西欧派と民族派による大規模な抗議行動が起こり,2014年2月ヤヌコーヴィッチ政権が倒壊暫定政権が発足した。ティモシェンコは釈放され,大統領選挙に出馬する意欲を見せているが,情勢は4年前と大きく変化しており,世論調査での支持はごく少数にとどまっている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ティモシェンコ」の意味・わかりやすい解説

ティモシェンコ
Tymoshenko, Yulia

[生]1960.11.27. ウクライナ=ソビエト社会主義共和国,ドネプロペトロフスク
ウクライナの政治家,実業家。首相(在任 2005,2007~10)。ドネプロペトロフスク国立大学で人工頭脳学を学び,1984年に経済学の学位を取得した。1995年,ウクライナ統一エネルギー・システムの社長に就任し,翌 1996年にはウクライナ議会に初当選した。1999年,ビクトル・ユシチェンコ首相により燃料・エネルギー担当の副首相に任命された。2001年11月,レオニード・クチマ大統領に対抗する野党勢力として「ユリア・ティモシェンコブロック」(BYT。発足時は「国家救済フォーラム」)を結成。2004年の大統領選挙ではユシチェンコ率いる「われらがウクライナ」と連携を組み,ユシチェンコを支持した。投票結果をめぐる大規模な抗議行動,オレンジ革命では主要な役割を果たし,ユシチェンコが大統領に就任した 2005年1月,首相に起用された。しかし,同 2005年9月,他の閣僚とともに解任された。2006年夏,親欧米の与党連合(オレンジ連合)が崩壊し,BYTは野党第一党となった。翌 2007年10月,選挙後の新しい議会で BYTと「われらがウクライナ・国民自衛」は与党連合を組むことで合意し,同年 12月,ティモシェンコは首相の座に返り咲いた。2010年1月に行なわれた大統領選挙に立候補し,第1回投票で 2位となった。翌 2月に行なわれた決選投票では 45.47%を得票したものの,ビクトル・ヤヌコビッチに敗れた。

ティモシェンコ
Timoshenko, Semën Konstantinovich

[生]1895. フルマンカ
[没]1970.3.31.
ソ連の陸軍軍人,元帥。革命勃発後は赤軍に入り,内戦ではスターリンにより騎兵師団長に任命された。ロシア=フィンランド戦争後,国防相。独ソ戦後,スターリンが国防相を兼任すると,プリピチャナ沼沢地からリトアニアまでの西部戦線の指揮をゆだねられたが,戦いに敗れた責任を問われて,スターリンの最高総司令部の幕僚となった。第2次世界大戦後は一時,地方軍管区司令官となったが,影響力を失った。

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