日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユシチェンコ」の意味・わかりやすい解説
ユシチェンコ
ゆしちぇんこ
Viktor Andriiovich Yuschenko
(1954― )
ウクライナの政治家。ユーシェンコともいう。旧ソ連ウクライナ共和国北東部スムイ州出身。1975年、テルノポリ財政経済大卒業。旧ソ連時代は中央銀行のウクライナ支部などで幹部を務めた。ソ連崩壊でウクライナが独立した後の1993年、ウクライナ中央銀行総裁に就任。金融制度改革と急激なインフレの抑制に手腕を発揮して注目され、1999年にクチマ大統領から首相に任命された。しかし2001年に首相を解任され、その後は野党「我らのウクライナ」を率いた。2004年、大統領選挙への立候補表明後には、大量のダイオキシンを何者かに盛られ容貌が一変した。このため対立陣営による暗殺計画との見方が広がったが真相は不明。選挙結果は当初、与党候補ヤヌコビッチVictor Yanukovych(1950― )の勝利と伝えられたが、不正疑惑が発覚した。これに不満を募らせた民衆の大規模抗議行動(オレンジ革命)に後押しされ、2004年12月に実施されたやり直し選挙で当選、2005年1月に大統領に就任した。
政権発足時は民主主義と市場経済システムの確立を内政の柱に掲げ、民主派勢力を束ね改革を強力に推進するとの期待を集めた。しかしたび重なる首相の交代や議会解散などで内政が混乱し、2010年1月の大統領選挙で敗退した。
[緒方賢一]