日本大百科全書(ニッポニカ) 「ティリヒ」の意味・わかりやすい解説
ティリヒ
てぃりひ
Paul Tillich
(1886―1965)
プロテスタント神学者、哲学者。北ドイツに生まれ、学業を終えてのち、第一次世界大戦に牧師として従軍。1919年ベルリンを最初にマールブルク、フランクフルトなどの大学で教えたが、宗教社会主義運動の指導者としてナチスにより解職され、1933年アメリカに渡る。後半生はユニオン神学校、ハーバード、シカゴ大学の教授としておもにアメリカで活動した。その思想の中心テーマは、キリスト教の啓示(福音(ふくいん))を現代の状況に関連づけて再解釈することにあった。彼はこの自らの立場を「相関の方法」による「答える神学」とよび、K・バルトらの弁証法神学から区別した。この立場では哲学のみならず、文学、芸術、教育、社会、政治など、およそ文化全般が宗教的な意味をもつことになる。彼はこうした視点から、現代社会における人間の問題に深い洞察を示し、大きな影響を与えた。『組織神学』3巻など著書も多い。
[田丸徳善 2015年3月19日]
『谷口美智雄・土居真俊訳『組織神学』全3巻(1955~1984/復刊・1990〜2004・新教出版社)』