南アフリカに7種あるキク科の草本植物であるが,花壇や切花や鉢植えに栽培されているのは,アフリカキンセンカD.sinuata DC.(=D.aurantiaca Hort.non DC.)の改良種で,一年草として取り扱われる。この種は草丈は30cm,葉は細長く鈍い鋸歯があり,1株数十本に分枝して,その先に径4cmの頭花を単生する。中心は管状花。まわりの舌状花は15枚程度,橙紅色または淡黄色で光沢があり,基部に漆黒色の斑紋がある。花は日中に開き,夕方や曇天には閉じる。瘦果(そうか)は管状花にできるものには翼があり,舌状花にできるものは棒状であるところから,Di(二つの)morphe(形)theca(包み)という属名がつけられている。
最近,ディモルフォセカと称する宿根性の草花が鉢物として市販されているが,これは,ディモルフォセカ属にごく近縁なオステオスペルムム属Osteospermumの1種O.ecklonis Norl.である。この属は南アフリカに約70種もあり,花はディモルフォセカによく似て,白色または紫色の舌状花をつけるが,種子には翼がない。これら両属の種子は,多量の油脂やディモルフェコリック酸を含有しているので,工業原料として注目され,アメリカでは栽培が試みられている。種まきは秋,苗の越冬は凍らない程度に保護すれば,3~4月に開花する。暖地では改良された大輪の四倍体品種ゴリアテGoliathが切花用にされ,ふつうは鉢作りとされる。1~2月にフレームで播種(はしゆ)して育てれば,5月に草丈低く開花する。宿根のディモルフォセカは,ふつう秋に挿芽で苗をつくり春の鉢物とするが,日だまりで直接霜を浴びなければ,-3℃でも枯れずに越冬する。実生は2年目の春に開花する。
執筆者:浅山 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キク科(APG分類:キク科)の半耐寒性一年草または多年草。南アフリカに7種自生し、英名はケープ・マリーゴールド、和名はアフリカキンセンカ。茎は高さ25~60センチメートル。5~6月、茎頂に頭状花を開く。花壇または切り花用に栽培する。一年草にはプルビアーリス種とシヌアータ種および両種の自然雑種と考えられるアウランティアカ種(自生地では多年草)がある。プルビアーリス種は、花は径2.5~5センチメートル、上面は白色で下面は紫色を帯びる。シヌアータ種は、花は径3~4センチメートル、橙黄(とうこう)色で中心は紫色。アウランティアカ種は、花は径5~6センチメートル、橙黄色で花弁基部は紫色を帯びる。多年草にはクリサンテミフォーリア種とエクローニス種がある。クリサンテミフォーリア種は、花は径3~4センチメートル、黄色。エクローニス種は、花は径6センチメートル、白色で花弁基部は青色。
[植村猶行 2022年3月23日]
日当りと排水のよい、腐植質に富む砂質土でよく育つ。9月から10月上旬に播種(はしゅ)し、一度鉢などに移植し、フレーム内で越冬させ、春に定植する。
[植村猶行 2022年3月23日]
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