日本大百科全書(ニッポニカ) 「フクロオオカミ」の意味・わかりやすい解説
フクロオオカミ
ふくろおおかみ / 袋狼
thylacine
marsupial wolf
Tasmanian wolf
[学] Thylacinus cynocephalus
哺乳(ほにゅう)綱有袋目フクロネコ科の動物。タスマニア島にのみ分布するため、タスマニアオオカミともよばれる。頭胴長1.1メートル、尾長53センチメートル。外形はイヌ類に似て、吻(ふん)は長く四肢も長い。尾は基部が太く、先にいくにつれてしだいに細くなる。後足の第1指を欠く。体毛は短く、体色はベージュ色またはコルク色で、背から胸、尾にかけて16~19本の暗い黒茶色の横縞(よこじま)がある。雌には育児嚢(いくじのう)があり後方に開口する。乳頭は4個。山岳地帯の谷間、岩石の点在する平原、森林などに生息する。倒木の下や岩石の間、やぶなどを隠れ家とする。おもに夜行性で、単独か、つがい、あるいは家族で、小哺乳類、ワラビー、鳥などを捕食し、ときにはヒツジを襲うこともある。1産2~4子で、子は3か月ぐらい育児嚢にとどまるといわれる。同じ肉食動物であるディンゴとの競争に敗れたり、ヒツジを襲ったことから人間に迫害されたりして、絶滅したのではないかと思われている。その後の調査で、まだ生き残っているという説もあるが、足跡を見たり鳴き声を聞いたというだけで、確実に生き残っているという証拠はまだない。
[中里竜二]