ネズミカンガルー(読み)ねずみかんがるー(英語表記)rat-kangaroo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネズミカンガルー」の意味・わかりやすい解説

ネズミカンガルー
ねずみかんがるー
rat-kangaroo

哺乳(ほにゅう)綱有袋目カンガルーネズミカンガルー属に含まれる動物の総称。この属Potorousの仲間は、オーストラリア、タスマニア島に次の3種が分布する。

(1)ハナナガネズミカンガルーP. tridactylusは、オーストラリアとタスマニア島に分布するが、オーストラリアでは絶滅に瀕(ひん)している。頭胴長41センチメートル、尾長23センチメートル。鼻先が非常に細長く、鼻鏡は鼻先の上面に突出する。後足は体に比べ短く、前足と後足の長さの差が少ない。耳は短く丸い。体の上面の毛は、夏毛では霜降り状の灰色を帯びた暗い茶色で、冬毛は黒っぽい。下面は白色または灰色を帯びた白色である。おもに海岸地方の低木林地帯に生息する。普通、夜行性で、単独で生活し、昼間は低木の茂みや草むらの中に、枯れ草などでつくった巣や隠れ家で休息する。巣材などを尾で巻き付けて運ぶ。主食は草である。妊娠期間約6週間で、普通1子を産む。生まれたばかりの子の頭胴長は約1.5センチメートルで、育児嚢(のう)で育てられる。寿命は約10年である。

(2)ギルバートネズミカンガルーP. gilbertiは、ウェスタン・オーストラリア州の南部に分布していたが、現在はほとんど絶滅したと思われる。頭胴長39センチメートル。

(3)ヒロガオネズミカンガルーP. platyopsは、ウェスタン・オーストラリア州南部とカンガルー島に分布したが、現在はほとんど絶滅したものと思われる。頭胴長34センチメートル。

 なお、近縁でネズミカンガルーの名がつくものにフサオネズミカンガルー属、アカネズミカンガルー属、サバクネズミカンガルー属、ニオイネズミカンガルー属などがある。

[中里竜二]


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改訂新版 世界大百科事典 「ネズミカンガルー」の意味・わかりやすい解説

ネズミカンガルー

外観がネズミに似た,ウサギ大の原始的なカンガルー類。有袋目カンガルー科ネズミカンガルー亜科とニオイネズミカンガルー亜科に属する哺乳類の総称。オーストラリア,タスマニア,ニューギニアの砂漠草原森林にすみ,5属8種がある。カンガルー類としては,前肢が比較的大きく,長い尾はふつう有毛。ハナナガネズミカンガルーPotorous tridactylus(英名long-nosed potoroo)など一部の種では尾をものに巻きつけることができ,巣材の草などを巻きとって運ぶ。腹には大きな育児囊がある。最大種アカネズミカンガルーAepyprymnus rufescens(英名rufous rat-kangaroo)は,体長36~52cm,尾長35~40cm,最小種ニオイネズミカンガルーHypsiprymnodon moschatus(英名musky rat-kangaroo)は,体長25cm,尾長16cm前後である。

 ふつう地下に数m四方の範囲に広がる複雑な巣穴をつくって集団あるいはつがいですみ,夜活動して,植物の葉,芽,根,果実などを食べる。年に1回ふつう1子を生み,数ヵ月間育児囊の中で育てる。農場ジャガイモを食害するなど,ごくふつうに見られる種もあるが,ニオイネズミカンガルーなどの一部の種では人が持ち込んだイヌやネコに駆逐されて,絶滅が心配されるほど数が減っている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のネズミカンガルーの言及

【カンガルー】より

…上半身はほっそりしていて前肢は小さい。カンガルー科は,カンガルー,ネズミカンガルー(イラスト),ニオイネズミカンガルーの3亜科に分けられ,狭義には,カンガルーはカンガルー亜科カンガルー属に含まれる大型のアカカンガルー(イラスト),オオカンガルー,それにワラルーを指す。 オーストラリア,タスマニア,ニューギニアに分布し,砂漠に生息する種から森林の樹上にすむ種(キノボリカンガルー類)まで約55種がある。…

※「ネズミカンガルー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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