日本大百科全書(ニッポニカ) 「デナリウス貨」の意味・わかりやすい解説
デナリウス貨
でなりうすか
denarius ラテン語
ローマ時代の銀貨。帝政初期の通貨体系においては、金貨アウレウスの25分の1、青銅貨アスの16倍の価値があった。紀元前3世紀末に鋳造が開始され、当初の量目は4.55グラムであった。金貨の恒常的な鋳造が行われていなかった共和政期にはローマの基本的な通貨の地位を占め、帝政期に入ってアウレウス貨が帝国の本位通貨になったのちも、経済活動においては中心的な役割を演じていた。しかしその品位はしだいに下落し、3世紀中葉には薄く銀をかぶせた銅貨にすぎなかった。また、3世紀の深刻なインフレーションと通貨体系の混乱のなかでデナリウス貨は重要性を失い、アウレリアヌス帝(在位270~275)が新しい銀貨を導入してからは、デナリウスという語が価値単位として用いられるにすぎなくなった。
[坂口 明]