改訂新版 世界大百科事典 「ソリドゥス金貨」の意味・わかりやすい解説
ソリドゥス金貨 (ソリドゥスきんか)
Solidus
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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307年、コンスタンティウス1世により従来のアウレウス金貨のかわりに鋳造された金貨。ソリドゥスSolidusは、完全な、純金の、信頼のおける、などを意味する。324年以後全ローマ帝国に使用され、1453年のビザンティン帝国の滅亡まで、名称はノミスマなどに変更されながらも存続した。その名のとおり1ポンドの金から72枚の金貨がつくられ、それぞれの金貨は4.55グラムの重量であった。ソリドゥス金貨は中世における地中海世界の最大の通貨として通用した。11世紀なかばに帝国の経済力が衰退に向かい始め、ミカエル7世Michael Ⅶ(1059―1078、在位1071~1078)のとき金保有率が50%に、ニケフォロス3世Nikephoros Ⅲ(1001―1081、在位1078~1081)のとき30%に下落するに及んで、その地位をドゥカート金貨に譲った。
[和田 廣 2022年6月22日]
…しかし,ネロ帝以来は財政悪化するごとに貨幣が改鋳されてその質は低下し,金銀本位制が脅かされた。ディオクレティアヌスとコンスタンティヌスは良貨に回復しようと努めたが,後者のソリドゥス金貨は良質で,後にも西方に流通した。しかし,このころから貨幣の装飾は形式化された皇帝その他の像となり,文字が大きくなり,美術的にはますます低下した。…
…彼は親しい者たちに官職や元老院議員の地位を与えるなどして,位階的な官職貴族層を育成し,官位や名誉称号や法的特権などで階層的に連なる身分秩序が確立してゆき,コロヌスの土地緊縛令が示すように,社会身分,職業の固定化,世襲化が進められていった。彼は経済面では放漫な政策をとり,コンスタンティノポリスを中心に東方都市は貨幣経済を繁栄させたが,政府は増税をくり返さざるをえず,良質のソリドゥス金貨を発行したものの,物価騰貴,役人の腐敗は防げなかった。主として帝国西方における貨幣経済の不振,税の物納化,大土地所有貴族の都市からの離脱・自立化などはいっそう進み,東西の相違はいよいよ明瞭になっていったのである。…
…すでに3世紀の間に,政府による貨幣の改悪のため貨幣価値は下がり,インフレーションは天文学的数字となり,貨幣経済は事実上機能しなくなった。コンスタンティヌス1世はソリドゥス金貨の鋳造開始など部分的に貨幣を改良し,ソリドゥスそのものは国際信用を回復することができたが,国内取引とくに税としては現物を課することが原則となった。ディオクレティアヌスが始めた新税制(カピタティオ・ユガティオ制)は全帝国の農地と農民に対してさまざまな現物課税を行った。…
※「ソリドゥス金貨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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