改訂新版 世界大百科事典 「デフォレスト」の意味・わかりやすい解説
デ・フォレスト
Lee De Forest
生没年:1873-1961
アメリカの発明家。ド・フォレストともいう。三極真空管の発明により有名である。アイオワ州カウンシル・ブラッフスに生まれた。イェール大学に学び,平行線端におけるヘルツ波の反射を研究して博士号をとった。ウェスタン・エレクトリック社で働き,1902年には独立してデ・フォレスト無線電信社を設立したが成功しなかった。06年,J.A.フレミングが発明した二極真空管にデ・フォレストは第三電極のグリッドを加えて,三極真空管を発明。彼は三極真空管を〈トリガー〉と名づけたが,のちにこれはオーディオンaudionと呼ばれるようになった。オーディオンは非減衰高周波振動を発生(安定した高周波の発振)するのに使われ,無線電話の発展に寄与した。また,14年には三極真空管による中継器を用いた北アメリカ大陸横断電話が実用化された。発振・増幅作用のある三極真空管は,能動素子として史上最初のものである。エレクトロニクスは三極真空管とともに始まったといってよい。トランジスターにとってかわられるまでは三極真空管はエレクトロニクスの主役であった。帰還・再生回路(フィードバック)の先取権をめぐってデ・フォレストとE.H.アームストロングが争ったことも有名である。
また1948年にデ・フォレストは日本での商業テレビ局の開設についての話を,のちに開設運動の中心となった正力(しようりき)松太郎のもとに持ち込んでおり,その翌年にはマッカーサー元帥にも信書を送っている。しかし実際の商業テレビの展開の場面には,彼の姿は現れていない。
執筆者:高橋 雄造+後藤 和彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報