改訂新版 世界大百科事典 「トウアズキ」の意味・わかりやすい解説
トウアズキ
Abrus precatorius L.
マメ科のつる性木本。輝くような紅色の豆がネックレスなどに用いられる。英名はblack-eye susan,Indian licorice,rosary pea。つる性の小高木になり,高さ3~5m。葉は奇数羽状複葉で,長さ10cmほど,楕円形の小葉は7~15対ある。腋生(えきせい)する短い枝の先端の総状花序に密集して,淡紫色の花をつける。花は長さ1cmあまりの蝶形花。果実は長さ3cmほどの豆果で,紅色の種子を3~6個いれる。種子は卵形から丸い形の楕円形で,光沢があり,基部は黒い。熱帯アジア原産で,現在は熱帯域に広く栽培され,あるいは野生化している。アフリカでは葉や根の甘みを利用することがあるというが,種子はアブリンabrinという有毒アルブミンを含み,タンパク質や脂肪分解酵素,アルカロイドも含有している。古くはインドやマレーで,この種子の重さで金の重さを測ったこともある。しかし,最も重要な用途は仏教徒の数珠や,その美しい緋紅色を利用したネックレスなどの装身具の製造である。また,毒性は煮るとなくなり,アフリカやインドでは食用にされることがあるが,多量に食べると頭痛が起こるといわれる。有名な有毒植物であるが,中国では種子を相思子(そうしし)の名で薬用にもし,皮膚病に用いる。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報