トゥック(英語表記)Thomas Tooke

改訂新版 世界大百科事典 「トゥック」の意味・わかりやすい解説

トゥック
Thomas Tooke
生没年:1774-1858

イギリス実業家,経済学者。イギリスの教会の聖職者の子としてロシアで生まれた。ロシア貿易に長期にわたり従事。1836年に実業界の第一線から退いた。経済理論家としても有名で,D.リカード,T.R.マルサスらとともに〈経済学クラブPolitical Economy Club〉の創立(1821)に参加,終生その会員だった。さらに王立統計学会の創設者の一人でもある。通貨供給量の変動を物価騰貴や経済不況の根本原因として考えるリカードに代表されるいわゆる〈通貨主義〉に対して,フラートンJohn Fullarton(1780-1849)らとともに,経済活動の膨張収縮が結果として通貨供給量の変動をもたらしているとする〈銀行主義〉理論を主張した(通貨主義・銀行主義)。主著物価および流通状態の歴史--1793-1837》(共著,1838-57),《通貨原理研究》(1844)。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トゥック」の意味・わかりやすい解説

トゥック
Tooke, Thomas

[生]1774.2.22. ペテルブルグ
[没]1858.2.26. ロンドン
ロシア生れのイギリスの実業家,経済学者。ロンドン・バーミンガム鉄道会社など種々の企業の経営やロシア貿易に従事し,早くから自由貿易を説き,保護関税反対の実践運動の先駆となった「商人請願」 Merchants' Petition (1820) の起草にたずさわった。通貨論争時には銀行学派の中心人物として活躍し,価格変動は銀行券の増減によって生じるのではなく,商品の需給関係によって決定されることを主張し,これを実証しようとした。また要求払い預金と銀行券とは貨幣と同じ役割を果す点を明らかにした。主著『穀物貿易,穀物法との関連での通貨について』 On the Currency in Connexion with the Corn Trade and the Corn Laws (1829) ,『物価史』A History of Prices,and of the State of the Circulation from 1793 to 1856 (6巻,38~57) ,『通貨原理の研究』 An Inquiry into the Currency Principles (44) など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥック」の意味・わかりやすい解説

トゥック
とぅっく
Thomas Tooke
(1774―1858)

イギリスの経済学者、実業家。ロシアのクロンシュタットに生まれる。若くしてイギリスの実業界に入り、ロンドン・バーミンガム鉄道会社その他の事業会社を設立、経営した。自由貿易論を主張、関税撤廃運動に尽力し、1820年には「自由貿易に関する請願書」を起草し、議会に提出。信用理論では銀行学派にたち、通貨学派が銀行券を紙券通貨とよび、鋳貨と一括して通貨の本体としたのに反対し、通貨学派の看過した紙券信用とよばれる商業手形、小切手などこそ通貨の本体であると主張、銀行券は手形割引に伴って発行され、不要なものは発行者に還流すると説いて、通貨学派の貨幣数量説に反対した。主著に『通貨原理の研究』An Inquiry into the Currency Principle(1844)、『物価史』A History of Prices, and of the State of the Circulation from 1793 to 1856, 6 vols.(1838~57)などがある。

[吉川光治]

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世界大百科事典(旧版)内のトゥックの言及

【通貨主義・銀行主義】より

… 他方,銀行主義論者(銀行学派。T.トゥック,J.フラートン,T.ウィルソン,J.S.ミル)は,このようなメカニズムに懐疑的である。たとえば金が流入しても人々がこれを銀行券に換えようとせず自宅に退蔵してしまえば金流入→銀行券増発という現象は生じない。…

※「トゥック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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