逆縁(読み)ギャクエン

デジタル大辞泉 「逆縁」の意味・読み・例文・類語

ぎゃく‐えん【逆縁】

仏語。悪行がかえって仏道に入る機縁となること。⇔順縁
親が子の死をとむらったり、敵対していた者などのために仏事をしたりすること。⇔順縁

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精選版 日本国語大辞典 「逆縁」の意味・読み・例文・類語

ぎゃく‐えん【逆縁】

〘名〙
① 仏語。果をもたらす因縁が果と一致しないこと。一般には、善事を縁として仏教にはいることを順縁、悪事を縁として仏教にはいることを逆縁という。
平家(13C前)一一「聖教値遇せし逆縁くちずして、かへって得道の因ともなる」
② (順当な因縁でないというところから) 親の子に対する供養、または、仇(あだ)などのためにする供養や法事。また一般に、親に先立って子が死ぬことをいう。
※俳諧・広原海(1703)三「逆縁の手向も受けよ父が水」
③ 普段縁のない者が偶然の縁で死者に回向したり、神社仏閣に参詣したりすること。
謡曲・隅田川(1432頃)「逆縁(ぎゃくえん)ながら念仏をおん申し候ひておん弔ひ候へ」
※大観本謡曲・自然居士(1423頃)「かの西天の貧女が、一衣を僧に供ぜしは、身の後の世の逆縁」
⑤ (面白くしゃれていう) 順序が逆であること。さかさまごと。
浄瑠璃仮名手本忠臣蔵(1748)七「逆縁(ギャクヱン)ながら後よりじっと抱しめ抱おろし」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「逆縁」の意味・わかりやすい解説

逆縁
ぎゃくえん

順縁(じゅんえん)の反対。縁(原因)の性質が果の性質と同じ場合、その縁は順縁というが、反対の場合を逆縁という。たとえば、聞法(もんぼう)などの縁によって仏法に入るのとは反対に、仏に反抗し、あるいは仏法をそしることなどの悪事が、かえって仏法に入る因縁となること。また日本では、子が先に死んで親がその供養(くよう)をすることを逆縁という。

[瓜生津隆真]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「逆縁」の意味・わかりやすい解説

逆縁
ぎゃくえん

間接的な原因 (縁) のもつ性質が反対の性質を結果的にそなえることで,たとえば,仏教を痛烈に非難することが逆に仏教に入門させる機縁となること,などをいう。また,年長である親が若年である子に先んじて死ぬという自然の順序に反し,子が先に死んだ場合,年長であるその親などがその子の冥福を願って供養すること,生前の仇敵が死者を供養することなども逆縁という。

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世界大百科事典(旧版)内の逆縁の言及

【レビレート】より

…この場合,生まれた子は亡兄でなく弟の子として扱われる。日本でも,オトウトナオリ,逆縁などと称されて好んで行われていた。これは家業の運営,遺子やヨメの処遇,血筋や姻縁関係の維持など,イエの円滑な存続に好都合であったからである。…

※「逆縁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」