日本大百科全書(ニッポニカ) 「トペリウス」の意味・わかりやすい解説
トペリウス
とぺりうす
Sakari Topelius
(1818―1898)
フィンランドの作家、歴史学者。西部の寒村クードネスに生まれる。医者・伝承詩採集家の父や、国民的大詩人ルーネベリの教育を受け、15歳で大学生となり、歴史学を学んだ。詩集『ヒースの花』三巻(1845~54)、W・スコット風の歴史小説『軍医物語』四巻(1851~66)は、美しい自然描写と祖国愛とが融合し、ロシア治下のフィンランド国民の祖国愛をかき立て、彼の名を不朽にした。しかし、世界的に名声を博したのは、愛と勇気と善意に満ちた幻想的な童話集『子供のための読物』八巻(1865~96)であった。「一度は愛の支配する神の国となるべきだ」と、高い理念を世に問いながら、子供たちにその実現を期待し、精魂を傾けて約300話の童話を残した。近代童話の父として、北欧ではアンデルセンをしのぐ人気を得ている。スウェーデン政府・同アカデミーより最高の栄誉を受けた。『星のひとみ』ほか他数が邦訳されている。
[高橋静男]
『渡部翠訳『ほしのひとみ』(1979・集英社)』