スウェーデン王国の公用語。スウェーデンのほかフィンランドの西・南部およびオーランド諸島でも話され、フィン語と並びフィンランド共和国の公用語ともなっている。インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派に属するノルド諸言語のなかで、言語人口は約800万ともっとも多い。
耳で聞くスウェーデン語はノルウェー語とよく似ており、歌うような調子がある。これは特有なアクセントによるもので、スウェーデン語は、なだらかに下降するアクセント1、下降ののち急に上昇するアクセント2の2種類のアクセントを使い分けている。元来、単音節語はアクセント1を、二音節語はアクセント2をもっている。たとえば、and(アヒル)は単音節語なのでアクセント1、ande(息)は二音節語なのでアクセント2で発音される。定形語尾がついてともにandenとなっても、アクセントの違いは保たれる。また、弱音節の母音がすべて曖昧(あいまい)母音に弱まったデンマーク語に比べ、スウェーデン語にはa、e、oの3種が残っており、スウェーデン語の響きを豊かなものにしている。
語尾にこの3母音が保持されているため、名詞の複数形で-ar, -er, -or、動詞の現在形で-ar, -erが区別されるなど、形態的に多少複雑な面もある。だが、その他の語形変化はおおむね簡略化している。古くは名詞が男性、女性、中性に三分されていたが、現代語では共性と中性の区別しかない。文字åは北欧語に独特で、「オ」を表す。語頭のg-, k-, sk-が次の母音の種類によって2通りに発音されるなどするが(gata「ガータ」に対してgöra「イェーラ」など)、文字と発音はほぼ対応している。外来語についても、実際の発音にあわせて積極的に表記を改めており、その点、つづりが保守的なデンマーク語と対照的である。たとえば、デンマーク語では外国語のつづりのままbureau(事務所)と書くのに対し、スウェーデン語ではbyråと変えている。
[福井信子]
『横山民司著『スウェーデン語の入門』(1978・白水社)』▽『横山民司著『エクスプレス スウェーデン語』(1987・白水社)』▽『エリアス・ヴェセーン著、菅原邦城訳『新版 北欧の言語』(1988・東海大学出版会)』▽『山下泰文著『スウェーデン語文法』(1990・大学書林)』▽『アラン・カーカー他編、山下泰文他訳『北欧のことば』(2001・東海大学出版会)』
スウェーデン王国の公用語で,またフィンランド共和国におけるフィンランド語と並ぶ公用語でもあり,スウェーデンで820万人(1977),フィンランドで30万人(1977)により使用される北欧最大の言語。スウェーデン語はゲルマン語派中の東ノルド語に属し,歴史的に古スウェーデン語(9~16世紀),近代スウェーデン語(16世紀以後)の二つの時期に区分される。スウェーデン語の最も古い記録は,新ルーン文字による9世紀の碑文であり,スウェーデンではやや後の時代のものも含めて約2500の碑文が発見されている。ラテン文字による記録は13世紀から始まり,おもに法律,宗教,詩に関する写本が残されている。14世紀からは,東イェータランドのバードステーナ修道院において,宗教関係の文献を中心としてラテン語からの翻訳が盛んになり,その翻訳に用いられた言語は書き言葉の規範とみなされた。また,14世紀末からのデンマークとの政治的連合関係により,スウェーデンの官庁語はデンマーク語の影響を強く受けるようになった。古スウェーデン語の時代には,音韻,文法における種々の変化が起こるとともに,語彙の面では,ラテン語,ギリシア語などからの宗教的語彙,低地ドイツ語からの商工業関係の語彙の借用が起こっている。16世紀には,デンマークからの独立と宗教改革により,スウェーデン語も新しい時代を迎える。特にグスタブ1世(グスタブ・バーサ)欽定訳聖書(1540-41)は,デンマーク語の影響の排除とストックホルム周辺の方言の影響力の増大という言語的特徴とともに,スウェーデン文語の規範の成立に大きな影響を与えることとなった。18世紀以後ダリーンOlof von Dalin(1708-63)をはじめ数多くの文人,学者が現れ,スウェーデン語の研究と文語の規範の確立に努めたが,首都であるストックホルムの言葉がその際,標準語として絶対的な優位を占め,現在にいたっている。
執筆者:斎藤 治之
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