ヒース(その他表記)heath

翻訳|heath

デジタル大辞泉 「ヒース」の意味・読み・例文・類語

ヒース(heath)

英国スコットランド地方で、ツツジ科エリカ属やギョリュウモドキ属の低木総称。また、それが群生した荒地中部および北部ヨーロッパに多い。

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精選版 日本国語大辞典 「ヒース」の意味・読み・例文・類語

ヒース

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] heath )
  2. エリカ
    1. [初出の実例]「麦かヒイスの生えた土地と果しない空」(出典:ゴッホの手紙(1951‐52)〈小林秀雄〉)
  3. などが群生した荒地。中部および北部ヨーロッパに多く見られる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヒース」の意味・わかりやすい解説

ヒース
heath

常緑の矮性(わいせい)低木(とくにツツジ科の)が優占する植生。ときには,そこに生える低木そのものを指すこともある。ドイツ語でハイドHeideともいう。草本や蘚苔類地衣類が優占する酸性土壌のやせた土地にも使うことがある。ヒースで有名なのは西ヨーロッパの沿岸部で,冷涼,湿潤で,冬が寒くない海洋性気候下のポドゾル化した貧栄養の酸性土壌の土地に広く分布し,南部ではエリカEricaの類やエニシダ類(マメ科)が目だち,北部ではハイデソウCalluna vulgarisが優占種である。そこでは,自然植生と考えられる高層湿原の乾性な土地や海岸の強風地を除いて,多くはもとは森林であったことが花粉分析からも知られ,家畜の放牧やそのための火入れがくり返されて成立したと考えられている。海洋性気候のカナダ東部にも同じ型のヒースがみられる。森林限界より上の高山帯の積雪で保護される場所には高山ヒースが,地中海沿岸地方には乾燥ヒースが出現する。湿潤熱帯でも,ケイ砂土よりなる酸性貧栄養の土地には常緑の低木が密生し,熱帯ヒースといわれている。
執筆者:

英語のヒースという語は,もともとは荒涼とした野原のことを指し,そこから,そうした荒野を一面に埋めつくして生えている植物をも指すようになった。そして,実際ヒースといわれる植物は,荒野に生えるにふさわしく,じみな花しかつけないが,群生してしっかり大地に根をおろし,人間の手による土地開発に対し強い抵抗を示しているように見える。荒野という意味のヒースheathから荒野の住人という意味のヒーズンheathenという言葉が造られた。そしてこの語は未開の土地の住民,文化の及ばない地方の住民,さらにはキリスト教文化が及ばない地方の住民,つまり異教徒という意味になった。そこからヒースの花の紫紅色は,異教徒がキリスト教徒の王に殺されたときの血の色であるというイメージもつくり出されたのであろう。
執筆者:


ヒース
Edward Richard George Heath
生没年:1916-2005

イギリス保守党政治家。1950年下院に入り,55年保守党下院院内総務,59年労相,60年国璽尚書,63年商相兼産業・貿易・地域開発相を歴任,61年よりEEC加盟交渉の首席代表。65年初の公選で保守党党首就任,70年首相となり,73年EC加盟を実現。庶民出身の保守党リーダーとして,新しい保守主義をめざす一方,労働問題や北アイルランド紛争には強硬姿勢を貫いた。74年辞任。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヒース」の意味・わかりやすい解説

ヒース
heath

植物生態学の用語で,針葉または線状のいわゆるヒース型の葉をもつ小低木が茂った乾原のこと。一般にはそのヒースに生じる小低木,特にツツジ科のエリカErica やハイデソウ Calluna vulgaris などをヒースと呼ぶこともある。イギリス,ドイツ,スカンジナビアなど北ヨーロッパの寒冷地に発達するヒースが最も著名で,高層湿原が乾燥して陸化したあとに典型的なものができる。南アフリカ共和国ケープ地方や南アメリカ南端部のパタゴニア地方にも大規模なものがある。小規模のものは高山の森林限界以上の高所によく現れ,日本の高山帯のガンコウランコケモモツガザクラなどの群落も広義にはヒースに入る。ライチョウ類はヒースの葉を食べる特徴的な鳥である。一方,園芸界で通常ヒースと呼んでいるのはエリカ属のもので,南アフリカ原産の E. melanthera とヨーロッパ産の E. carnea が多い。(→ブライア

ヒース
Heath, Sir Edward Richard George

[生]1916.7.9. ブロードステアーズ
[没]2005.7.17. ソールズベリー
イギリスの政治家。オックスフォード大学卒業。 1950年保守党下院議員に初当選。 1952年保守党下院院内総務。 1959年労働大臣。 1960年国璽尚書として外交問題を担当,1961年からイギリスのヨーロッパ経済共同体 EEC加盟交渉の首席代表を務めた。 1963年商務大臣。 1965年保守党党首となったが 1966年の総選挙で保守党は大敗した。しかし 1970年6月の総選挙で労働党を破り,首相に就任。 1972年イギリスのヨーロッパ共同体 EC加盟に成功したあと,総選挙で敗れ 1974年辞任。 1979年にイギリス史上初の女性首相となった保守党のマーガレット・サッチャーの政権時代にはその強硬な内外政策に反発,党内反サッチャー勢力の代表的存在となった。 1992年ナイトに叙された。 2001年政界引退。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒース」の意味・わかりやすい解説

ヒース(Edward Richard George Heath)
ひーす
Edward Richard George Heath
(1916―2005)

イギリスの政治家。大工の家に生まれ、奨学金でオックスフォード大学を卒業。1950年保守党下院議員となった。保守党院内総務を務めたのち、マクミラン内閣で労働相、国璽尚書(こくじしょうしょ)を歴任、ヨーロッパ経済共同体(EEC)への加入交渉にあたった。1965年保守党党首となり、1970年の総選挙で勝利して首相に就任、ヨーロッパ共同体(EC)加入を実現した。1974年の総選挙で敗れて首相の座から退き、1975年には党首選でサッチャーに敗北した。1992年ナイトに叙された。2001年政界を引退。

[木畑洋一]


ヒース(植物)
ひーす
heath

イギリスでは本来荒れ地を意味するが、そこにはエリカ属Ericaの低木が多く、それらの植物もヒースとよばれている。生態的には乾原のエリカ属やカルーナ属Calluna(ギョリュウモドキ)の群落をいう。

[湯浅浩史]

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百科事典マイペディア 「ヒース」の意味・わかりやすい解説

ヒース

英国保守党の首相(在職1970年−1974年)。1950年下院に入り,保守党院内総務,1959年労相,1960年国璽尚書,1963年商相兼産業・貿易・地域開発相を歴任。1961年からEEC(ヨーロッパ経済共同体)加盟交渉の首席代表。1965年保守党の最初の公選により,中産階級の出身でありながら党首に選ばれる。1970年の総選挙で劇的な逆転勝利をかちえて首相となり,1973年にはEC(ヨーロッパ共同体)への加盟を実現した。北アイルランドと労働組合に対しては強硬姿勢をとった。1974年の総選挙で敗れて下野,保守党党首をM.サッチャーに譲った。
→関連項目ヒューム

ヒース

ギョリュウモドキとも。ヨーロッパ北西部〜西アジアに分布するツツジ科の常緑低木,しばしば荒地や湿原に広く群生する。高さ15〜75cm,花は8〜9月に咲き,ばら色〜白色,エリカに似ているが,4裂した萼片が花冠より長く,花冠を隠す点で区別される。なお,本種やエリカ類におおわれる荒地を指すこともあり,またエリカ類の総称ともされる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ヒース」の解説

ヒース
Edward Heath

1916~2005

イギリス保守党の首相(在任1970~74)。1950年下院議員となり,経済関係の閣僚を務め,65年初めての公選によって保守党党首となる。70年総選挙に勝って組閣。73年イギリスのEC加盟を実現したが,総選挙で敗れて党首をサッチャーに譲った。

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旺文社世界史事典 三訂版 「ヒース」の解説

ヒース
Edward Richard George Heath

1916〜  
イギリスの政治家
保守党に属し,1961年からヨーロッパ経済共同体(EEC)加盟交渉首席代表,70年首相となる。1973年にはヨーロッパ共同体(EC)加盟を実現。1974年の選挙で敗北して辞任。

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世界大百科事典(旧版)内のヒースの言及

【イギリス】より

…EC加盟をめざすも再度ド・ゴールに拒否され,八方塞がりの状況であった。 1970年に誕生した保守党ヒース政権は,経済への国家介入の縮小・公共支出削減など自由主義的理念を掲げた。しかし,景気後退とともに〈成長へのダッシュ〉(Uターンともいわれた)政策に向かった。…

※「ヒース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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