翻訳|heath
常緑の矮性(わいせい)低木(とくにツツジ科の)が優占する植生。ときには,そこに生える低木そのものを指すこともある。ドイツ語でハイドHeideともいう。草本や蘚苔類・地衣類が優占する酸性土壌のやせた土地にも使うことがある。ヒースで有名なのは西ヨーロッパの沿岸部で,冷涼,湿潤で,冬が寒くない海洋性気候下のポドゾル化した貧栄養の酸性土壌の土地に広く分布し,南部ではエリカEricaの類やエニシダ類(マメ科)が目だち,北部ではハイデソウCalluna vulgarisが優占種である。そこでは,自然植生と考えられる高層湿原の乾性な土地や海岸の強風地を除いて,多くはもとは森林であったことが花粉分析からも知られ,家畜の放牧やそのための火入れがくり返されて成立したと考えられている。海洋性気候のカナダ東部にも同じ型のヒースがみられる。森林限界より上の高山帯の積雪で保護される場所には高山ヒースが,地中海沿岸地方には乾燥ヒースが出現する。湿潤熱帯でも,ケイ砂土よりなる酸性貧栄養の土地には常緑の低木が密生し,熱帯ヒースといわれている。
執筆者:藤田 昇
英語のヒースという語は,もともとは荒涼とした野原のことを指し,そこから,そうした荒野を一面に埋めつくして生えている植物をも指すようになった。そして,実際ヒースといわれる植物は,荒野に生えるにふさわしく,じみな花しかつけないが,群生してしっかり大地に根をおろし,人間の手による土地開発に対し強い抵抗を示しているように見える。荒野という意味のヒースheathから荒野の住人という意味のヒーズンheathenという言葉が造られた。そしてこの語は未開の土地の住民,文化の及ばない地方の住民,さらにはキリスト教文化が及ばない地方の住民,つまり異教徒という意味になった。そこからヒースの花の紫紅色は,異教徒がキリスト教徒の王に殺されたときの血の色であるというイメージもつくり出されたのであろう。
執筆者:山下 正男
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イギリスの政治家。大工の家に生まれ、奨学金でオックスフォード大学を卒業。1950年保守党下院議員となった。保守党院内総務を務めたのち、マクミラン内閣で労働相、国璽尚書(こくじしょうしょ)を歴任、ヨーロッパ経済共同体(EEC)への加入交渉にあたった。1965年保守党党首となり、1970年の総選挙で勝利して首相に就任、ヨーロッパ共同体(EC)加入を実現した。1974年の総選挙で敗れて首相の座から退き、1975年には党首選でサッチャーに敗北した。1992年ナイトに叙された。2001年政界を引退。
[木畑洋一]
イギリスでは本来荒れ地を意味するが、そこにはエリカ属Ericaの低木が多く、それらの植物もヒースとよばれている。生態的には乾原のエリカ属やカルーナ属Calluna(ギョリュウモドキ)の群落をいう。
[湯浅浩史]
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1916~2005
イギリス保守党の首相(在任1970~74)。1950年下院議員となり,経済関係の閣僚を務め,65年初めての公選によって保守党党首となる。70年総選挙に勝って組閣。73年イギリスのEC加盟を実現したが,総選挙で敗れて党首をサッチャーに譲った。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…EC加盟をめざすも再度ド・ゴールに拒否され,八方塞がりの状況であった。 1970年に誕生した保守党ヒース政権は,経済への国家介入の縮小・公共支出削減など自由主義的理念を掲げた。しかし,景気後退とともに〈成長へのダッシュ〉(Uターンともいわれた)政策に向かった。…
※「ヒース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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