トモエガ

改訂新版 世界大百科事典 「トモエガ」の意味・わかりやすい解説

トモエガ

鱗翅目ヤガ科Spirama属の昆虫の総称。やや大型のガで,前翅中央にある顕著な渦巻状の紋を巴(ともえ)模様に見たてたもの。東南アジアの熱帯に分布し,開張約5.5~7cm。一般に雄は暗色であるが,雌では数本の緑褐色の条線で彩られ,裏面は朱色である。日本にはオスグロトモエS.retortaとハグルマトモエS.helicinaの2種が分布し,ともに北海道を除く本土にふつう。幼虫ネムノキの葉を食べる。雌雄差異のほか,この属のガは,5,6月に現れる1化の個体と,夏秋に現れる2化の個体では斑紋に相当な相違があり,とくにオスグロトモエの1化の個体では雌雄ともに明るい緑褐色を呈し,巴状紋を欠いていて,アカイロトモエと呼ばれたこともある。なお,同じくヤガ科のうちにオオトモエシロスジトモエなど,上記2種のほかにも類似の巴状紋をもつ種があるが,別属とされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トモエガ」の意味・わかりやすい解説

トモエガ
ともえが / 巴蛾
[学] Spirama retorta

昆虫綱鱗翅(りんし)目ヤガ科に属するガ。別名オスグロトモエ。はねの開張65ミリメートル内外の大形種。顕著な季節型と雌雄異形を生ずることで知られる。年3化性で、2化以降の夏のガでは前翅表面に大きなともえ紋が現れ、雄では黒褐色、雌では赤褐色で、波形をした多数の横線をもつ。春に出る1化のガは、雌雄の差異はほとんどなく、前翅のともえ状の紋はほとんど消失し、痕跡(こんせき)をとどめる程度である。幼虫はネムノキの葉を食べる夜行性で、シャクトリムシ状である。昼間は樹幹の低い所に多数集まっている。本種の季節的2型は、長らく別種として扱われていたが、幼虫の飼育によって同一種であることが証明された。東南アジアにも広く分布し、日本では青森県が分布の北限である。

[杉 繁郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トモエガ」の意味・わかりやすい解説

トモエガ
Speiredonia retorta

鱗翅目ヤガ科。前翅長 30mm内外。褐色のガで,前翅表に大きな渦状の眼状紋があり,それが巴の紋に似ていることからその名がある。前後翅ともに翅の外縁に平行の波状横帯があり,雄では褐色の濃淡であるが雌では明瞭な縞模様となっている。腹部には赤色部があり,特に雌では著しい。幼虫はネムノキの葉を食べる。蛹で越冬し,成虫は年2回出現する。北海道,本州,四国,九州,奄美大島朝鮮,中国,ミャンマー,インド,スリランカなどに分布する。

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百科事典マイペディア 「トモエガ」の意味・わかりやすい解説

トモエガ

鱗翅(りんし)目ヤガ科の1種。開張60mm内外。夏型は暗褐色。前翅に巴(ともえ)状の紋があるが,雌は雄より地色が淡色で紋が明瞭。春型は雄雌ともに赤褐色,紋がはっきりしない。日本全土,朝鮮,中国〜インド,インドネシアなどの熱帯アジアに分布。幼虫はネムノキの葉を食べ,成虫は年2回5〜6月と7〜8月に発生する。

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