日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラウツボ」の意味・わかりやすい解説
トラウツボ
とらうつぼ / 虎鱓
leopard moray eel
dragon moray eel
[学] Enchelycore pardalis
硬骨魚綱ウナギ目ウツボ科に属する海水魚。千葉県館山(たてやま)湾以南の太平洋沿岸、長崎県橘(たちばな)湾、小笠原(おがさわら)諸島海域、朝鮮半島南部、台湾など西太平洋からインド洋に分布する。上下両顎(りょうがく)は細長くて湾曲しているので、口を閉じても完全に閉まらない。後鼻孔(こうびこう)は管状で頑丈であり、前鼻孔よりも長く上方へ伸びる。全長は頭長の6.2~7.0倍、脊椎(せきつい)骨数は125~129。暗褐色の地色に、丸い多数の白色の斑紋(はんもん)が不規則に散在し、各斑は暗色で縁どられる。吻(ふん)、頭の下部、腹面は橙赤(とうせき)色。成長段階による体色変化が著しい。浅海の岩礁やサンゴ礁域にすみ、小魚やタコなどを貪食(どんしょく)する。最大全長は約92センチメートル。地方により食用にされるほか、皮膚が強くて弾力性があるため、なめし革に利用される。本種は、日本の多くのウツボ属Gymnothorax魚類とは口が完全に閉じられないことで区別できる。以前、本種は大西洋や地中海に分布するMuraena属に分類されていたが、この属の種はインド洋・太平洋に分布しないこと、両顎の特徴的な形態などから、コケウツボ属Enchelycoreに移された。
[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]