バルト沿岸のリトアニア共和国の町。首都ビルニュスの南西23kmにある。人口7200(1989)。1917年までトロキTrokiと呼ばれた。リトアニア大公の居城〈トラカイの城〉があることで有名で,カルベ湖上に浮かぶ古城の姿は中世をしのばせるリトアニア随一の景観である。内外の観光客が訪れ,夏季には各地から湖畔に避暑客が集まるが,古城の静寂は破られず,中世そのままの姿をとどめている。城内は中世の遺品を収める博物館を兼ね,コンサートも催される。この古城は14世紀リトアニア大公カストゥティスによって築造され,ドイツ騎士修道会のリトアニア侵攻に対処した重要な要塞であった。大公国両頭政治時代ビルニュスとともに,カストゥティスとその息子ビタウタスの都城として栄えたが,ドイツ騎士修道会の敗退とともにやがて廃れていった。なおトラカイの地域には,リトアニア人とはまったく言語系統の異なるチュルク系のカライム語を話す住民が約400人近くいる。この種族は14世紀末ごろ大公ビタウタスによってタタール人とともにクリミア半島から連れてこられたカライム人の子孫であり,今でもリトアニア人と言語,習慣を異にしている点で関心を集めている。
執筆者:村田 郁夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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