デジタル大辞泉 「トンチン年金」の意味・読み・例文・類語
トンチン‐ねんきん【トンチン年金】
2 低解約返戻金型の個人終身年金保険のこと。解約時や死亡時の返戻金を低く設定することで、年金原資を増やし、長生きする加入者に支払う年金を確保する仕組み。生きている間ずっと年金を受け取れるが、一定の年齢を超えないと、受取総額が支払総額を大きく下回るリスクがある。
ナポリ生れの医師(銀行家ともいわれる)トンティLorenzo Tonti(1630-95)がルイ14世時代のフランス財政改善のため建策した年金制度。発案者の名にちなんでトンチンtontine年金と呼ばれ,17~18世紀のヨーロッパに広く行われた。国庫に遊資を提供する者に対し,元利の支払に代えて,終身年金を与えるものである。この場合,出資者の年齢群によって集団を設け,各集団ごとにその集団全員の応募額を元として一定率の利息額に相当する年金を開始する。ちなみに各集団に対する年金総額は毎年等額であるのに,集団メンバーは逐年死亡減少するから,死亡者の受けた年金分は生存者に配分され,各メンバーは年々増大する年金を受けとり,生存者1人となるときは,単独で全額を受領するしくみであり,集団メンバーが死滅するときは年金の支払は停止され,払い込まれた資金は政府に帰属する。この年金ははじめフランス国会で否決され,1689年にようやく承認を得て実施されたものであるが,オランダ,イギリス,ドイツなどでは早くから国債調達の手段として採用され,国によっては私的な資金調達の手段としても利用された。またこの年金制度は生命保険思想の普及にも役だった。
執筆者:大林 良一
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