年金制度(読み)ねんきんせいど

百科事典マイペディア 「年金制度」の意味・わかりやすい解説

年金制度【ねんきんせいど】

廃疾,老齢,死亡に際しその当事者および遺族の生活保障のため,毎年一定額の金銭を支給する制度。その種類には,国が社会保障として行う公的年金,企業が行う企業年金,個人が自由意志で契約する個人年金等がある。公的年金には,年金の支払に必要な費用を保険の仕組に基づいて被用者が負担する拠出制年金厚生年金厚生年金保険)をはじめとする被用者年金国民年金)と,そうでない無拠出制年金福祉年金)があり,前者を年金保険という。なお,これからの高齢社会に備えて公的年金を安定的で公平なものにするため,1985年法改正が行われ,1986年4月より実施された。その中身は,二階建ての年金制度で,一階部分はだれもが加入する国民年金で老齢・遺族・障害に対して平等な定額の基礎年金をもらい,二階部分は,民間サラリーマンは厚生年金,公務員等は共済年金で在職中の報酬に応じて年金をもらう。〔年金制度改革〕 年金財政の悪化にともない,政府は2004年の通常国会で保険料率引上げ(厚生年金の場合,労使折半で現行13.58%を2004年度から毎年0.354%ずつ上げ,2017年度以降は18.30%で固定),基礎年金への国庫負担率を現行の3分の1から2009年度までに2分の1への引上げ,給付は過去3年の公的年金の被保険者の減少率や平均余命の伸び率で自動的に引下げ年金の給付水準を毎年少しずつ下げていく〈マクロ経済スライド〉(年0.9%の減少の見込み)などの改革案を強行採決により成立させたが,年金制度の一元化などの抜本的検討は先送りにされた。2012年2月,野田佳彦内閣は,〈税と社会保障の一体改革〉(社会保障・税一体改革大綱)を閣議決定し,年金を含む社会保障の財源確保のために消費税率を引き上げる方針を固め,国会に上程。国会での審議が続けられる中,2012年6月8日から6月15日まで民主党自民党公明党の三党による修正協議が行われ,この三党合意を基にした消費税増税法案を含む関連法案が同年6月に衆院本会議で,同年8月に参院本会議で可決された。しかし社会保障改革については,子ども子育て分野など,一部のみ可決され,残りの社会保障改革の多くの分野については社会保障国民会議で議論されることとなった。2012年11月,民主・自民・公明の三党合意で同会議が発足,持続可能な社会保障制度の構築をめざす。2013年1月,第二次安倍政権のもとでは最初となる会議が開催され,安倍首相は〈3党合意に基づき一体改革を進め,安心社会を作り上げる〉と表明ししている。2015年4月から〈マクロ経済スライド〉が初めて実施される。
→関連項目遺族年金国民年金基金終身年金トンチン年金日本郵政省

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「年金制度」の意味・わかりやすい解説

年金制度[イギリス]
ねんきんせいど[イギリス]

イギリスの社会保障制度は,1942年のベバリッジ報告に基づき,46年の国民保険法によって確立された。その特徴は,(1) イギリス居住のすべての人を対象とし,老齢,死亡,傷病,障害,失業,業務災害等により所得を喪失・減少させるあらゆる事故を包括して保障する単一制度,(2) 給付水準は,国民保険制度による給付を最低生活の保障にとどめ,それ以上は自助努力により確保すべきという考え方,(3) 給付は均一,拠出も均一,というものであった。年金制度はこの国民保険制度の一部になる。 48年から実施され,59年の改正まで続いた。この改正で,退職年金では,基礎年金に加え2階建て方式の所得比例拠出による所得比例給付が導入され,これまでの均一拠出による均一給付に差等制の拠出と給付を上乗せした。 75年の改正で,差等方式に代わって賦課方式による国家所得比例年金制度が新たに発足した。現行の退職給付は,均一の基礎年金と付加年金である国家所得比例年金が,男子 65歳,女子 60歳以上で退職した者に給付される。基礎年金は物価スライドする。国家所得比例年金は障害年金,母子手当,寡婦年金と併せて支給される。また基礎年金の受給資格や額とは無関係である。なお,基準を満たす職域年金に加入している者はこの付加年金の加入を免れる。

年金制度[アメリカ合衆国]
ねんきんせいど[アメリカがっしゅうこく]

アメリカの社会保障制度は連邦政府と州政府との2本建てである。中軸は連邦政府直営の老齢・遺族・障害・健康保険 (OASDHI) で財政方式により年金保険の老齢・遺族・障害年金保険 (OASDI) と老人健康保険のメディケア (HI) に分けられる。 OASDIは被保険者に退職,死亡,障害の事故が発生した場合,保険により従前生活水準の低下を防ぐために所得の一部を補填する制度である。強制加入の被保険者は民間企業の被用者,決められた所得水準以上の自営業者である。老齢給付は満 62歳以上の適格被保険者,62歳に達したその配偶者に与えられる。 65歳からは完全年金を支給されるが,65歳未満では減額年金になる。ただし配偶者加給は 16歳未満の子,障害児を持つ場合は減額されない。適格期間は 21~61歳で,最低 40四半期数が必要である。遺族給付は 60歳以上の配偶者に与えられる。障害者は 50歳から,16歳未満あるいは障害児を持つ寡婦 (寡夫) には年齢に関係なく支給される。 18歳未満の未婚の子にも支給される。障害給付は完全被保険者資格を保有する者,それに準じる者を対象とする。給付額の算定基礎は在職平均所得額である。

年金制度[スウェーデン]
ねんきんせいど[スウェーデン]

国の事業である公的年金制度は,65歳に達したすべての住民に一律の年金額を支給する国民基礎年金と,これに加えて従前の所得の 60%に相当する額を支給する所得比例年金である国民付加年金 (ATP) とがある。ただし ATPの支給額は国民基礎年金の 7.5倍までの制限がある。また,60~64歳を対象にした部分年金がある。国民基礎年金の支給額は基礎額から算出される。夫婦の場合はそれぞれが 78.5%,単身者は 96%である。 ATPがないか,低額の ATPしか受給できない者には,年金付加が加算され,調整される。基礎額は物価スライド方式により引き上げられる。保険料率は国民基礎年金が 7.45%,ATPが 13.0%である。

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人材マネジメント用語集 「年金制度」の解説

年金制度

・pension system
・日本における年金制度は公的年金制度と私的年金制度に分かれる。
・公的年金制度は、国または国に準ずる機関が行う年金制度であり、法律によって定められている。
・私的年金制度は、企業が従業員を対象に行う企業年金や個人が自助努力として加入する個人年金がある。
・企業年金には厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金、適格退職年金、自社年金などがあり、個人年金には保険型や貯蓄型の個人年金がある。
・被用者を対象とした公的年金や企業年金などを総称した被用者年金、共済組合の組合員を対象とした共済年金などの分け方や団体の職員や会員などを対象とした非適格年金などの種類がある。
・現在、年金制度を取り巻く環境は急激に変化している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「年金制度」の意味・わかりやすい解説

年金制度
ねんきんせいど

年金保険制度

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