改訂新版 世界大百科事典 「ドゥーゼ」の意味・わかりやすい解説
ドゥーゼ
Eleonora Duse
生没年:1859-1924
イタリア近代の国際的女優。祖父,父親ともに俳優で,父親の劇団の巡業先ビジェバノに生まれ,4歳で初舞台に立つ。14歳のときにベローナで《ロミオとジュリエット》のジュリエットを演じ才能を認められた。1879年ナポリでゾラ作《テレーズ・ラカン》のテレーズを演じ最初の成功を得る。80年トリノ市劇場の主演女優となり,同じころイタリアにやって来たS.ベルナールの《椿姫》を見て触発され,すぐにS.ベルナールの得意とした《バグダードの姫君》を上演して,まったく異なった役づくりで圧倒的好評を得た。85年以降,世界を巡演,S.ベルナールと人気を二分する国際的名女優となったが,当時の外面的な演技術を批判し,〈物の内面〉からの創造を目ざした彼女の演技は,〈人生そのものである〉とも評された。それはK.S.スタニスラフスキーの演技論にも深い影響を与えたと言われる。レパートリーはシェークスピアから近代市民劇と幅広いが,とくにイプセン劇と97年以降の愛人でもあったG.ダンヌンツィオの劇で世界的名声を博した。1909年突如引退するが21年復帰,以後はイプセンとダンヌンツィオのみを演じた。24年巡業先のアメリカのピッツバーグで客死した。
執筆者:溝口 廸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報