特定の疾患に有効な治療薬から、別の疾患に有効な新たな薬効をみつけだすこと。欧米では製薬会社や国が組織的に開発を進めている。略称DR。ドラッグ・リプロファイリングDrug Reprofilingともよばれる。これまでの事例では、副作用として明記されていたものから偶然に新たな作用が認められることがほとんどである。その例としてよく知られているのが勃起(ぼっき)不全(ED:Erectile Dysfunction)治療薬のバイアグラで、当初は冠動脈拡張作用をもつ狭心症治療薬として開発されたが、男性性器の勃起を促す作用のあることが確認され、新たに勃起抑制酵素の抑制と陰茎動脈の拡張作用をもつED治療薬として製品化された。また、サリドマイドは睡眠薬として開発され、妊婦のつわり予防を目的に鎮静剤として消化薬に配合されたが、あざらし肢症などの先天性障害児が生まれる結果となり発売中止となった。しかしその後、ハンセン病に併発する皮膚炎や疼痛(とうつう)に薬効が認められたため、アメリカで販売が許可され、日本でも多発性骨髄腫(こつずいしゅ)の治療薬として再認可されている。近年では血管拡張作用のある高血圧治療薬として開発されたミノキシジル、および前立腺肥大症の治療薬として開発されたプロペシア(フィナステリド)に発毛作用が確認され、それぞれ育毛剤として再開発された。
新薬の開発では、治験において副作用が認められ安全性が確保できなかったり、薬効として明確な体内動態を証明できないことも多い。しかし既存薬はヒトの体内動態も明らかで安全性も確認されており、作用をあらためて調べ直し、ほかの疾患治療薬として実用化できれば開発コストの削減にもつながる。その意味でエコファーマともよばれる。アメリカではDRへの取り組みは盛んで、自社開発薬の再利用を積極的に行う製薬会社や、実用化されなかった薬を公開し国が新薬開発を後押しする試みも始まっている。関連学会も設立され毎年国際会議も開かれており、認可される新薬のおよそ半数はDRによるものといわれる。日本でも日本薬学会などでの研究発表において、DR関連の演題が多く見られるようになっている。ただし、DRにより開発された薬の副作用にはふたたび注意をはらう必要がある。
[編集部]
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