日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナッシュビル」の意味・わかりやすい解説
ナッシュビル
なっしゅびる
Nashville
アメリカ合衆国、テネシー州中央部の都市で、同州の州都。人口56万9891(2000)。カンバーランド台地の麓(ふもと)のナッシュビル盆地に位置する。肥沃(ひよく)な農業地域の中にあり、綿花、タバコ、穀物、果物、肉牛の集散地であるとともに、同州中央部の商・工業の中心地でもある。ガラス、化学製品、衣類、タイヤ、暖・冷房機械、食品などの多様な工業が発達している。1925年、同地のラジオ局で始まった音楽番組(後の「グランド・オール・オープリ」Grand Ole Opry)が人気を博したことで多くのレコード会社やレコーディング・スタジオが集まり、カントリー・ミュージック(ヒルビリー)の町として発展。かつては合衆国のシングル盤レコードの約50%を生産していた。現在も数多くのレコーディング・スタジオが軒を連ねる。また、宗教関係の本や雑誌、電話帳などの印刷・出版業も盛ん。
1779年に開拓者たちによって集落がつくられ、翌年ナッシュバラ砦(とりで)が建設、84年、アレゲニー高原以西で最初の自治体としての町となった。ナッチェズ街道の北の終点であり、また、カンバーランド川に面した河港であったため、綿花の取引中心地として栄えたが、のちには鉄道の中心地として発達した。1843年にテネシー州の州都となった。ナッシュビルは「南部のアテネ」とよばれ、ギリシア風の建築物が多い。また、バンダービルト大学、フィスク大学、テネシー州立大学、テネシー大学ナッシュビル校など多くの大学があり、教育の中心地でもある。カントリー・ミュージックの殿堂とオープリランドUSA(音楽のテーマパーク)があることで有名である。
[菅野峰明]