ナトルプ(読み)なとるぷ(英語表記)Paul Natorp

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナトルプ」の意味・わかりやすい解説

ナトルプ
なとるぷ
Paul Natorp
(1854―1924)

ドイツの哲学者、教育学者。新カント学派のうちマールブルク学派の代表者の一人。デュッセルドルフに生まれ、のちマールブルク大学教授。ヘルマン・コーヘンの思想を継いで、精神科学との関連のなかで、批判主義の立場からその哲学を展開した。学問は事実ではなくて生成であり、したがって静的でなく発展するものである。換言すれば、学の中心をなす先天的範疇(はんちゅう)もまた生成・発展をしていくのであって、学はまさしくこうした範疇の体系にほかならない、とした。このような思想の形成は、カントのほかにフィヒテヘーゲルなどからの影響によるところが大きい。ナトルプはまた、ヘルバルトが開拓した近代教育学に哲学的な基礎づけを与えたことでも知られている。

 著書に『社会教育学』(1898)、『精密科学の論理的基盤』(1910)、『批判的方法にもとづく心理学総論』(1912)などがある。

[武村泰男]

『ナトルプ著、篠原陽二訳『社会理想主義』(1962・明治図書出版)』『篠原陽二訳『社会的教育学』(1983・玉川大学出版部)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナトルプ」の意味・わかりやすい解説

ナトルプ
Natorp, Paul

[生]1854.1.24. ジュッセルドルフ
[没]1924.8.17. マールブルク
ドイツの哲学者,社会教育学者。新カント派のマールブルク学派の代表者の一人。 1885年マールブルク大学員外教授,92年同教授。観念論の創始者をプラトンとし,プラトン入門が哲学入門であるとして,カントの先験的観念論をその継承ととらえた。教育学的にはペスタロッチを重視し,個人教育と同時に集団生活における社会教育の重要性を説いた。また第1次世界大戦終了後,社会哲学としての社会的観念論を説いた。主著『社会教育学』 Sozialpädagogik (1899) ,『精密科学の論理的基礎』 Die logischen Grundlagen der exakten Wissenschaften (1910) ,『社会的観念論』 Sozial idealismus (20) 。蔵書成城大学にナトルプ文庫として保存されている。

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