タンタロス(読み)たんたろす(英語表記)Tantalos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンタロス」の意味・わかりやすい解説

タンタロス
たんたろす
Tantalos

ギリシア神話の富裕な王。ゼウスの子で、神々に愛され、その食卓に招かれたが、このときの秘密を人間に漏らした、あるいは神々の飲食物ネクタルアンブロシアを人間に与えたために、底なしの奈落(ならく)タルタロスへ落とされた。彼は池中に首までつかり、水を飲もうとすれば水がなくなり、頭上果実の実った枝を手でとろうとすれば枝が遠ざかり、永遠の飢えと渇きに苦しんでいるという。また、神々の知力を試すために、タンタロスは子のペロプスを殺して料理し、神々に供したという。頭上に巨石がつるされ、永遠の恐怖におののいているともいわれる。ペロプスからアガメムノンに至るタンタロスの子孫がタンタリダイTantalidaiとよばれていた。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タンタロス」の意味・わかりやすい解説

タンタロス
Tantalos

ギリシア神話の人物。ゼウスの息子,ペロプスニオベの父。シピュロス山の王。罪を犯したため地獄に落され,永劫の罰を受けた。罪については諸説があり,ピンダロスでは神々の食卓から神聖な食物 (アンブロシアとネクタル ) を盗み,それを人間に与えたからだといわれている。ホメロスをはじめ多くの詩人によれば,地獄に落された彼は飢えと渇きに苦しめられ,池の中に首までつかりながら,水を飲もうとすれば水は引き,また頭上には実りも豊かな果樹の枝が垂れ下がっていたが,果実に手を伸ばすと,風がその果実をさらってしまった。またピンダロスによると彼の頭上には大石がまさに落ちようとしており,彼は常に大石に押しつぶされる恐怖にとらわれていたといわれる。

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