日本大百科全書(ニッポニカ) 「リディア」の意味・わかりやすい解説
リディア
りでぃあ
Lydia
小アジア(現在のトルコ領)西部の古代地方名。カイストロス川の谷間に位置し、北はミシア、東はフリギア、南はカーリアなどの地方に接していた。西にはキュメ、スミルナ、エフェソスなどのギリシア植民都市があった。ギリシア文化の影響を受けた土着系メルムナダイ朝が、ここにサルディスを首都とする王国を築いた(前700ころ~前550)。海岸と内陸部を結ぶ交通の要衝にあったこの王国は、交易と豊富な資源(金、農産物)によって繁栄し、その最後の王クロイソスのときはアナトリア中央部をも勢力下に置いたが、アケメネス朝ペルシア王キロスに敗れた(前546)。ペルシア帝国時代にはその西部のサトラピ(属領)の中心的存在であった。アレクサンドロス大王の征服(前334)以後は、ギリシア・マケドニア人の支配下にあったが、紀元前189年のマグネシアの戦いのあとは、ペルガモンのアッタロス朝の領土となった。前133年にはローマの支配下に入り、そのアシア(アジア)属州となった。
リディアの文明は土着のものとギリシア系のものが混合している。そこでは史上初の貨幣(金銀合金製)が前7世紀に発明され、それがギリシアとペルシア帝国に採用された。また、リディア旋法とよばれる歌謡の節回しがギリシアに伝わった。リディア人の土着言語はローマ時代にも用いられていたが、アナトリアに入った古いインド・ヨーロッパ語の形を残していたと思われる。
[小川英雄]