にして(読み)ニシテ

デジタル大辞泉 「にして」の意味・読み・例文・類語

に‐して

[連語]
断定助動詞なり」の連用形接続助詞して」》…であって。「人にして人にあらず」
言出ことでしはことなるか小山田苗代水中淀なかよど―」〈・七七六〉
格助詞」+サ変動詞「」の連用形+接続助詞「」》
場所を表す。…において。
「家―結ひてし紐を解きけず思ふ心を誰か知らむも」〈・三九五〇〉
時を表す。…で。「彼は一歳にしてすでに字を書いていたという」
三十みそぢ余り―、さらにわが心と一のいほりを結ぶ」〈方丈記

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「にして」の意味・読み・例文・類語

に‐して

連語〙 (「して」は、サ変動詞「する」の連用形に接続助詞「て」の付いたもの)
[1] (格助詞「に」に「して」の付いたもの。全体で格助詞的にはたらく)
① 場所または時を表わす。…において。…にあって。…で。
万葉(8C後)四・六三四「家二四手(ニシて)見れど飽かぬを草枕旅にも妻とあるがともしさ」
平家(13C前)一「清和天皇九歳にして文徳天皇の御禅をうけさせ給ふ」
② (近代の文語的な用法) …の場合でも。…でさえも。→してから
吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「君にして此(この)伎倆あらんとは」
[2] (形容動詞連用形語尾の「に」、断定の助動詞「なり」の連用形「に」に接続助詞的用法の「して」の付いたもの) …で。…であって。…であって、しかも。
※古事記(712)中・歌謡「ぬなは繰り 延へけく知らに 我が心しぞ いや愚(をこ)邇斯弖(ニシテ) 今ぞ悔しき」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)旅立「月日は百代(はくだい)の過客にして、行かふ年も又旅人也」
[補注]上代には「にて」に比べて「にして」の例が圧倒的に多い。平安時代には、「にして」は和歌や漢文訓読系のものに限られるようになったが、後に混用された。

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