(読み)テ

デジタル大辞泉 「て」の意味・読み・例文・類語

て[接助・終助]

[接助]活用語の連用形に付く。ガ・ナ・バ・マ行の五段活用動詞の音便形に付く場合は「で」となる。形容詞、形容詞型助動詞に付く場合は「って」の形をとることもある。
ある動作・作用から、次の動作・作用へと推移・連続する意を表す。「学校に行っ勉強する」「着替えをすませ寝る」
「春過ぎ―夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山」〈・二八〉
原因・理由を表す。…ので。…ために。「頭が痛く寝ていた」
「老いかがまり―むろにもまかでず」〈・若紫〉
手段・方法を表す。「歩い通学する」「泣い抗議する」
時間の経過を表す。「卒業し五年になる」
並立・添加を表す。「雨が降っ風が吹く」「大きく甘い柿」
「昔、男臥し―思ひ、起き―思ひ」〈伊勢・五六〉
逆接を表す。「わかってい答えない」「見見ぬふり」
「昔、男身はいやしく―、いとになき人を思ひかけたりけり」〈伊勢・九三〉
(「…て…て」の形で)強調の意を表す。「売っ売っ売りまくる」
(「…について」「…に関して」「…に関して」「…にとって」などの形で)次の動作・作用の行われる事態・状況・関係事物などを提示する意を表す。「この問題に関し触れるならば」「我々にとっ大事なことは」
補助動詞に続けて、動作・作用の内容を具体的に示す意を表す。「思い出しみる」「嫌になっしまう」
「五条なる家たづね―おはしたり」〈・夕顔〉
10 連用修飾語を作り、状態・様子を表す。
「いといたく面痩おもやせ給へれど、なかなかいみじくなまめかしく―、ながめがちにをのみ泣き給ふ」〈・夕顔〉
[終助]活用語の連用形に付く。ガ・ナ・バ・マ行の五段活用動詞の音便形に付く場合は「で」となる。形容詞、形容詞型助動詞に付く場合は「って」の形をとることもある。
質問や確かめの気持ちを表す。「あなたにもでき」「いらしたことあっ
(「てよ」の形で)話し手が、自分の判断や意見を主張する気持ちを表す。「私にはあなたの気持ちよくわかっよ」「とてもすばらしくっよ」
依頼、軽い命令を表す。…てください。…てくれ。「早く来」「私にも見せね」
(形容詞・形容詞型助動詞に付いて)気持ちの高まりを表す。…てたまらない。「とても寂しく」「推理小説を読んだので怖く
[補説]は、くだけた表現、うちとけた会話に用いられる。いずれも接続助詞「て」によって導かれる文を表現しない言い方で、本来の質問・主張・命令などに比べると柔らかく、婉曲えんきょくな表現になっている。12は女性専用語。

て[格助・係助・終助]

助詞「って」が「ん」で終わる語に付く場合に用いられる》
[格助]って」に同じ。「今、なん言った」「人間ものは偉大な物だ」
[係助]って」に同じ。「山田さんいい人ね」「それはいかん、もう遅いよ」
[終助]って」に同じ。「そんなことはありません
[補説]は近世以降みられ、「夏は昼寝にかぎるて」のような「ん」に付かない言い方もあるが、現代語ではあまり用いられない。

て[格助]

[格助]《上代東国方言》引用の格助詞」に同じ。
「父母がかしらき撫でくあれ―言ひし言葉けとばぜ忘れかねつる」〈・四三四六〉

て[助動]

[助動]《完了の助動詞「つ」の未然形・連用形》⇒[助動]

て[五十音]

五十音図タ行の第4音。歯茎の無声破裂子音[t]と母音[e]とからなる音節。[te]
平仮名「て」は「天」の草体から。片仮名「テ」は「天」の初3画から。

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精選版 日本国語大辞典 「て」の意味・読み・例文・類語

  1. [ 1 ] 〘 格助詞 〙
    1. 格助詞「と」に相当する上代東国方言。引用を示す。
      1. [初出の実例]「父母が頭(かしら)かき撫で幸(さ)くあれ(テ)いひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる」(出典万葉集(8C後)二〇・四三四六)
    2. 現代口頭語。
      1. (イ) 引用の「と」と同じことが多い。→って
        1. [初出の実例]「お前とこのとっつぁんも、何か少し加減が悪いやうな話だがもうえいのかい、聞くと」(出典:姪子(1909)〈伊藤左千夫〉)
      2. (ロ) (イ)用法の下に続く「言う」の語を略した用法。…という。
        1. [初出の実例]「まあ野暮を云はずに取ときたまへことさ」(出典:義血侠血(1894)〈泉鏡花〉五)
  2. [ 2 ] 〘 接続助詞 〙 ( 完了の助動詞「つ」の連用形から )
    1. [ 一 ] 活用語の連用形を受けてそこまでの部分をいったんまとめあげ、さらに後続の部分へとつなげる役割を果たす。その関係のあり方から幾つかの用法に分けられる。受ける連用形が撥音便化している場合は濁音化して「で」となる。中世以後、バ行マ行四段動詞のウ音便形に続く場合も同様。
      1. 動作・状態の並列を表わす。
        1. [初出の実例]「石(いす)の上(かみ) 布留を過ぎ(テ) 薦枕(こもまくら) 高橋過ぎ 物多(さは)に 大宅過ぎ」(出典:日本書紀(720)武烈即位前・歌謡)
        2. 「真珠なす 二つの石を 世の人に 示し給ひ弖(テ) 〈略〉御(み)手づから 置かし給ひ(テ) 神ながら 神さびいます」(出典:万葉集(8C後)五・八一三)
        3. 「水の面に、草よりは短く、青き木の葉の有るを」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
      2. 確定条件を表わす。
        1. (イ) 順接の場合。
          1. [初出の実例]「手足わななき(テ)〈此の五字は音を以ゐよ〉得殺したまはざりき」(出典:古事記(712)中)
          2. 「風烈しく吹き、静かならざりし夜」(出典:方丈記(1212))
        2. (ロ) 逆接の場合。
          1. [初出の実例]「目には見(テ)手にはとらえぬ月のうちの桂の如き妹をいかにせむ」(出典:万葉集(8C後)四・六三二)
          2. 「いだきおろされ、泣きなどはし給はず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)薄雲)
      3. 仮定条件を表わす。
        1. (イ) 順接の場合。「ては」の形になる事が多い。
          1. [初出の実例]「我さへうち捨てたてまつり、いかなる様にはふれ給はむとすらん」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
        2. (ロ) 逆接の場合。…ても。
          1. [初出の実例]「命を持(たも)つと云、遂に不死ざる者无し」(出典:今昔物語集(1120頃か)一〇)
      4. 連用修飾の関係を表わす。
        1. (イ) 下の用言を修飾限定する場合。下の用言が「見ゆ」「思う」「覚ゆ」等の感覚動詞の場合はその内容が示される。
          1. [初出の実例]「三寸ばかりなる人、いとうつくしうゐたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
          2. 「何事が起ったかと胸に動悸をはずませ帰って見ると」(出典:野菊の墓(1906)〈伊藤左千夫〉)
        2. (ロ) 補助動詞に続く場合。→補注( 1 )( 2 )
          1. [初出の実例]「いたくさやぎ(テ)〈此の七字は音を以ゐよ〉有(あり)那里(なり)」(出典:古事記(712)上)
          2. 「男もすなる日記といふものを、女もしみんとてするなり」(出典:土左日記(935頃)発端)
          3. 「これは武蔵の国隅田川の渡し守に候」(出典:謡曲・隅田川(1432頃))
          4. 「ちょっと呼ふ来て下され」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)下)
      5. 連体修飾の関係を表わす。
        1. [初出の実例]「此子を見つけ後に竹取るに」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. [ 二 ] 格助詞「に」「と」や副詞「かく」等を受ける。→にてとてかくてさて
  3. [ 3 ] 〘 終助詞 〙
    1. 文末にあって詠嘆を表わす。主として近世以後の用法。
      1. [初出の実例]「イヤもう貴様は念を入れて稽古なさるる事はござらぬ」(出典:歌舞伎・三十石艠始(1759)序幕)
    2. 連用形を受けて上昇のイントネーションを伴い、質問・反問等を表わす女性語。優しさと親しみが感じられる。
      1. [初出の実例]「あたしでも美人に見え?」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉六)
    3. 連用形を受けて「てよ」の形で、自分の意見や判断を伝える女性語。→ってよ
      1. [初出の実例]「道理で仁礼さんにお逢ひしましよ」(出典:家族会議(1935)〈横光利一〉)
    4. 依頼の気持を表わす現代語。「…てください」「…てくれ」「…てちょうだい」([ 二 ][ 一 ](ロ)の用法)の「ください」「くれ」「ちょうだい」を省略したもの。
      1. [初出の実例]「ちょいとお母さんの喉に触らし」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉六)

ての補助注記

( 1 )「源氏‐東屋」の「大輔などが、若くのころ」や、「源氏‐若菜下」の「生きの世に」の例は「若くてありし頃」「生きてありし世」等の短絡的表現と思われる。
( 2 )近世には「ている」の「いる」を省略した特殊な用法が現われる。歌舞伎の「一心二河白道‐二」の「『それは妹ぢゃ、どれにゐる』『お竹と申し飯炊(めしたき)ぢゃ』」や「傾城江戸桜‐中」の「知っなら教へてたも」等。


て【て・テ】

  1. 〘 名詞 〙 五十音図の第四行第四段(タ行エ段)に置かれ、五十音順で第十九位のかな。いろは順では、第三十五位で、「え」のあと「あ」の前に位置する。現代標準語の音韻では、舌先と上の歯茎との間で調音される無声破裂音 t と母音 e との結合した音節 te にあたり、これを清音の「て」という。これに対して、「て」に濁点をつけた「で」は、同じ調音点における有声破裂音 d と母音 e との結合した音節 de にあてられる。これを「て」の濁音という。「て」の字形は「天」の草体から、「テ」の字形は「天」の省画から出たものである。ローマ字では、清音に te、濁音に de をあてる。

  1. ( 完了の助動詞「つ」の未然形・連用形 ) ⇒助動詞「つ」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「て」の意味・わかりやすい解説

五十音図第4行第4段の仮名。平仮名の「て」は「天」の草体から、片仮名の「テ」は「天」の初めの3画からできたものである。万葉仮名では「弖、氐、底、天、提、帝(以上音仮名)、手、而、價、直(以上訓仮名)」などが清音に使われ、「代、田、、泥、埿、庭(以上音仮名)、而(訓仮名)」などが濁音に使われた(「而」は清濁両用)。ほかに草仮名としては「(帝)」「(亭)」「(轉)」「(傳)」「(弖)」などがある。

 音韻的には/te/(濁音/de/)で、上歯茎と舌との間で調音する無声破裂音[t](有声破裂音[d])を子音にもつ。

[上野和昭]

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