デジタル大辞泉
「て」の意味・読み・例文・類語
て[格助・係助・終助]
《助詞「って」が「ん」で終わる語に付く場合に用いられる》
[格助]「って
」に同じ。「今、なんて言った」「人間てものは偉大な物だ」
[係助]「って
」に同じ。「山田さんていい人ね」「それはいかんて、もう遅いよ」
[終助]「って
」に同じ。「そんなことはありませんて」
[補説]
は近世以降みられ、「夏は昼寝にかぎるて」のような「ん」に付かない言い方もあるが、現代語ではあまり用いられない。
て[格助]
[格助]《上代東国方言》引用の格助詞「と」に同じ。
「父母が頭掻き撫で幸くあれ―言ひし言葉ぜ忘れかねつる」〈万・四三四六〉
て[助動]
[助動]《完了の助動詞「つ」の未然形・連用形》⇒つ[助動]
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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て
- [ 1 ] 〘 格助詞 〙
- ① 格助詞「と」に相当する上代東国方言。引用を示す。
- [初出の実例]「父母が頭(かしら)かき撫で幸(さ)くあれ弖(テ)いひし言葉(けとば)ぜ忘れかねつる」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三四六)
- ② 現代口頭語。
- (イ) 引用の「と」と同じことが多い。→って①。
- [初出の実例]「お前とこのとっつぁんも、何か少し加減が悪いやうな話だがもうえいのかいて、聞くと」(出典:姪子(1909)〈伊藤左千夫〉)
- (ロ) (イ)の用法の下に続く「言う」の語を略した用法。…という。
- [初出の実例]「まあ野暮を云はずに取ときたまへてことさ」(出典:義血侠血(1894)〈泉鏡花〉五)
- [ 2 ] 〘 接続助詞 〙 ( 完了の助動詞「つ」の連用形から )
- [ 一 ] 活用語の連用形を受けてそこまでの部分をいったんまとめあげ、さらに後続の部分へとつなげる役割を果たす。その関係のあり方から幾つかの用法に分けられる。受ける連用形が撥音便化している場合は濁音化して「で」となる。中世以後、バ行マ行四段動詞のウ音便形に続く場合も同様。
- ① 動作・状態の並列を表わす。
- [初出の実例]「石(いす)の上(かみ) 布留を過ぎ底(テ) 薦枕(こもまくら) 高橋過ぎ 物多(さは)に 大宅過ぎ」(出典:日本書紀(720)武烈即位前・歌謡)
- 「真珠なす 二つの石を 世の人に 示し給ひ弖(テ) 〈略〉御(み)手づから 置かし給ひ弖(テ) 神ながら 神さびいます」(出典:万葉集(8C後)五・八一三)
- 「水の面に、草よりは短くて、青き木の葉の有るを」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
- ② 確定条件を表わす。
- (イ) 順接の場合。
- [初出の実例]「手足わななき弖(テ)〈此の五字は音を以ゐよ〉得殺したまはざりき」(出典:古事記(712)中)
- 「風烈しく吹きて、静かならざりし夜」(出典:方丈記(1212))
- (ロ) 逆接の場合。
- [初出の実例]「目には見而(テ)手にはとらえぬ月のうちの桂の如き妹をいかにせむ」(出典:万葉集(8C後)四・六三二)
- 「いだきおろされて、泣きなどはし給はず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)薄雲)
- ③ 仮定条件を表わす。
- (イ) 順接の場合。「ては」の形になる事が多い。
- [初出の実例]「我さへうち捨てたてまつりて、いかなる様にはふれ給はむとすらん」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
- (ロ) 逆接の場合。…ても。
- [初出の実例]「命を持(たも)つと云て、遂に不死ざる者无し」(出典:今昔物語集(1120頃か)一〇)
- ④ 連用修飾の関係を表わす。
- (イ) 下の用言を修飾限定する場合。下の用言が「見ゆ」「思う」「覚ゆ」等の感覚動詞の場合はその内容が示される。
- [初出の実例]「三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- 「何事が起ったかと胸に動悸をはずませて帰って見ると」(出典:野菊の墓(1906)〈伊藤左千夫〉)
- (ロ) 補助動詞に続く場合。→補注( 1 )( 2 )。
- [初出の実例]「いたくさやぎ弖(テ)〈此の七字は音を以ゐよ〉有(あり)那里(なり)」(出典:古事記(712)上)
- 「男もすなる日記といふものを、女もしてみんとてするなり」(出典:土左日記(935頃)発端)
- 「これは武蔵の国隅田川の渡し守にて候」(出典:謡曲・隅田川(1432頃))
- 「ちょっと呼ふで来て下され」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)下)
- ⑤ 連体修飾の関係を表わす。
- [初出の実例]「此子を見つけて後に竹取るに」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- [ 二 ] 格助詞「に」「と」や副詞「かく」等を受ける。→にて・とて・かくて・さて
- [ 3 ] 〘 終助詞 〙
- ① 文末にあって詠嘆を表わす。主として近世以後の用法。
- [初出の実例]「イヤもう貴様は念を入れて稽古なさるる事はござらぬて」(出典:歌舞伎・三十石艠始(1759)序幕)
- ② 連用形を受けて上昇のイントネーションを伴い、質問・反問等を表わす女性語。優しさと親しみが感じられる。
- [初出の実例]「あたしでも美人に見えて?」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉六)
- ③ 連用形を受けて「てよ」の形で、自分の意見や判断を伝える女性語。→ってよ。
- [初出の実例]「道理で仁礼さんにお逢ひしましてよ」(出典:家族会議(1935)〈横光利一〉)
- ④ 依頼の気持を表わす現代語。「…てください」「…てくれ」「…てちょうだい」([ 二 ][ 一 ]④(ロ)の用法)の「ください」「くれ」「ちょうだい」を省略したもの。
- [初出の実例]「ちょいとお母さんの喉に触らして」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉六)
ての補助注記
( 1 )「源氏‐東屋」の「大輔などが、若くてのころ」や、「源氏‐若菜下」の「生きての世に」の例は「若くてありし頃」「生きてありし世」等の短絡的表現と思われる。
( 2 )近世には「ている」の「いる」を省略した特殊な用法が現われる。歌舞伎の「一心二河白道‐二」の「『それは妹ぢゃ、どれにゐる』『お竹と申し飯炊(めしたき)してぢゃ』」や「傾城江戸桜‐中」の「知ってなら教へてたも」等。
て【て・テ】
- 〘 名詞 〙 五十音図の第四行第四段(タ行エ段)に置かれ、五十音順で第十九位のかな。いろは順では、第三十五位で、「え」のあと「あ」の前に位置する。現代標準語の音韻では、舌先と上の歯茎との間で調音される無声破裂音 t と母音 e との結合した音節 te にあたり、これを清音の「て」という。これに対して、「て」に濁点をつけた「で」は、同じ調音点における有声破裂音 d と母音 e との結合した音節 de にあてられる。これを「て」の濁音という。「て」の字形は「天」の草体から、「テ」の字形は「天」の省画から出たものである。ローマ字では、清音に te、濁音に de をあてる。
て
- ( 完了の助動詞「つ」の未然形・連用形 ) ⇒助動詞「つ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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