ニックリッシュ(読み)にっくりっしゅ(英語表記)Heinrich Nichlisch

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニックリッシュ」の意味・わかりやすい解説

ニックリッシュ
にっくりっしゅ
Heinrich Nichlisch
(1876―1946)

ドイツ経営経済学の創始者の1人。ライプツィヒ商科大学およびチュービンゲン大学に学び、1910年からマンハイム商科大学教授、21年から45年までベルリン商科(のち経済)大学教授を務めた。彼はドイツ規範論的経営経済学を代表する学者であり、また動態論批判の最初の人でもある。彼の経営共同体本質とする一般経営経済学は有名であるが、彼の主著『経営経済論』Die Betriebswirtschaft(初版1912。第七版1929~32で大増訂され、現書名となる)において重要な地位を占めている計算論はとくに著名である。そこでは、貸借対照表は、借方の期間的価値区分の機能と、貸方の価値監視機能すなわち資本維持管理の機能とを通じて、期末時点の統一的な経営像を与えると説明されている。この観点は、貸借対照表二勘定系統説として知られる彼の勘定学説の基礎ともなっている。

[宇南山英夫]

『木村喜一郎訳『経営経済学原理』(1930・文雅堂書店)』『高田馨著『経営共同体の原理――ニックリシュ経営学の研究』(1957・森山書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニックリッシュ」の意味・わかりやすい解説

ニックリッシュ
Nicklisch, Heinrich

[生]1876.7.19. テッタウ
[没]1946.4.28. ベルリン
ドイツの経営経済学の創始者。ライプチヒ商科大学,テュービンゲン大学に学び,1910年マンハイム商科大学教授 (1914~18同大学長) ,21年ベルリン商科大学教授となる。会計学の領域では貸借対照表説あるいは貸借対照表二勘定学説といわれる勘定説を立てた。動態論の批判者で,彼の学説は静態論といわれ,規範論的経営経済学の典型的なものでドイツの経営経済学に大きく寄与した。また彼は企業を資本家,経営管理者,労働者がそれぞれ人間として経営の主体となる,経営共同体としてとらえた。主著『経済経営学』 Wirtschaftliche Betriebslehre (1922) ,『経営経済原理』 Grundfragen für die Betriebswirtschaft (28) ,『経営経済』 Die Betriebswirtschaft (第7版,28~32) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android