日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニッポニテス」の意味・わかりやすい解説
ニッポニテス
にっぽにてす
[学] Nipponites
軟体動物門頭足綱アンモノイド(アンモナイト)類の1属。1904年(明治37)矢部長克(やべひさかつ)により、北海道の上部白亜系から記載された。いわゆる異常巻きアンモナイト類に属し、分類学上アンキロセラス亜目のノストセラス科に含められる。現在まで4種が記載されているが、いずれもヘビがとぐろを巻いたような特異な形態の殻をもつ。
当初、奇形と考えた学者もいたが、どの個体も殻が球面上で周期的にUターンを繰り返しながら成長することや、ほかの殻の形質は正常巻きの類と共通なので、奇形説は否定されている。コンピュータを駆使した理論形態学的研究から、ニッポニテスは水平面と殻の成長方向のなす角度を一定の範囲内で規則的に切り替えることによって、水中での生息姿勢を調節しながら特異な形態の殻を形づくったことがわかった。北海道、サハリン、カムチャツカ、北米太平洋岸、マダガスカルのやや沖合いの海に堆積(たいせき)した上部白亜系から産する。
[棚部一成]