日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ニューズ・オブ・ザ・ワールド
にゅーずおぶざわーるど
News of the World
イギリスの大衆的日曜紙。同じニューズ社の日刊紙『サン』の日曜版にあたる。2011年廃刊。新聞発展期の発行者として有名なジョン・ベルJohn Bell(1745―1831)の息子ジョン・ブラウン・ベルJohn Browne Bellによって、1843年に創刊された。当時の平均より5ペンス半も安い3ペンスという廉価、犯罪や裁判のニュースと政治に関する急進的な主張を特徴とする内容が大衆に受け入れられ部数を伸ばした。創刊から11年後の1854年、年間合計567万部、週平均で10万部以上を記録した。しかし1855年にJ・B・ベルが亡くなると、しだいに紙勢が衰えた。1891年にこれを買収し、経営を建て直したのがカー一族(ラッセルズLascelles Carrと甥(おい)のエムズレイEmsley Carr)と顧問弁護士ジョージ・リデルGeorge Riddell(1865―1934)である。当時、販売店は日曜日には休業していたが、リデルは専売店を組織し、日曜日でも全国各地で新聞を販売できる体制にした。これにより部数は増え続け、1900年代に入ると100万部を超え、1918年には275万部、そして第二次世界大戦後の1950年にはピークの850万部に達した。その後はテレビの影響もあって部数はふたたび衰勢を示し、経営に意欲を失ったカー一族は、1968年オーストラリア出身のメディア企業家ルパート・マードックの率いるニューズ・コーポレーションに株を売却した。編集内容は、犯罪、ゴシップ、スキャンダル、ロマンスなどをセンセーショナルに扱うことで有名であった。犯罪や事件の当事者の談話・手記を大金で買い取って記事にする小切手ジャーナリズム、有名人の私生活を盗撮するパパラッチ、偽装して取材対象に接近するおとり取材などを駆使する大衆新聞の代表的存在で、名誉毀損(きそん)訴訟やメディア倫理団体からの警告は絶えなかった。2011年、これまで王室関係者、政治家、芸能人、誘拐事件被害者の家族、イラク戦争戦死者の遺族等々に対しおびただしい数の盗聴が行われていることが議会で取り上げられ、政治問題化したことにより、ニューズ・コーポレーションは同紙を廃刊とした。発行部数は2000年413万部から2011年279万部へ減少していた。
[橋本 直]