日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニュー・ヒューマニズム」の意味・わかりやすい解説
ニュー・ヒューマニズム
にゅーひゅーまにずむ
The New Humanism
ネオ・ヒューマニズムともいう。新人文主義と訳す。20世紀初頭約30年間アメリカで行われた哲学・批評運動。ルソーに代表されるロマンティシズム、自然主義の特色とされる自我主張や無節度を否定する一方、近代の科学的実証主義にも反対を唱える。そして、人間は単なる自然的存在ではなく、倫理的傾向と自由意志をもつという前提にたち、古典主義(クラシシズム)的立場から調和ある人間性を完成することを目標とする思想である。近代の全面否定と古典古代への回帰は同時に古典文学への回帰でもあった。おもな批評家には、P・E・モアとバビット、バビットの弟子で『アメリカ文学における自然』(1923)や『アメリカの批評』(1928)の著者ノーマン・ファースターNorman Foerster(1887―1972)らがいる。『マシュー・アーノルド』(1917)の著者スチュアート・シャーマンStuart P. Sherman(1881―1926)、また、T・S・エリオットも一時期この派に近かった。1930年、シンポジウム『ヒューマニズムとアメリカ』がファースターにより編まれたが、このころから台頭した左翼と「新批評(ニュー・クリティシズム)」の批評家たち(J・C・ランサム、A・テート、R・P・ウォーレン、C・ブルックスら)の攻撃の前に、ニュー・ヒューマニズムは影を薄くしていった。
[島田太郎]