一般に古代ギリシア・ローマ時代とその文化を指して使われる語。この概念は古典復興の形をとったルネサンスの革新運動の中で生まれ,新しい時代をつくり出すために,古代ギリシア・ローマの人間中心の見方・考え方を模範とし,これを〈規範とすべき第一級の傑作〉という意味で〈古典〉と呼んだことからはじまった。〈古典〉を生み出した古代という意味をもつ古典古代は,それゆえ,近代ヨーロッパがつくり出した概念で,古代に生まれたキリスト教的文化とも,ギリシア以前のオリエント文明とも,またヨーロッパ中世文化とも区別された意味内容をもつ。このような古典古代に特徴的な社会基盤は,共和政や民主政を生み出した市民共同体であり,その中心的成員は自由な土地所有農民であり,自由な土地所有は共同体の公有地とならんで,共同体存立の基礎であった。ミュケナイ時代のギリシア人の共同体も,より古い段階であるとはいえ,この基本的特徴をそなえているところから,古典古代の中に含ませることができる。したがって今日の学問の水準からいっても,古典古代を古代ギリシア・ローマの総称と考えてよい。
執筆者:太田 秀通
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古代ギリシア・ローマのことを、近代ヨーロッパが自分自身の心のふるさとと考えて名づけた概念で、ルネサンス以降のヨーロッパ近代化の過程で形成された。ルネサンス期の人々が神学的・非合理的思考を克服し、人間的・合理的なものを求めたとき、人間中心の一級の文化を生んだ古代ギリシア・ローマが模範とされ、それを「古典古代」とする考えが芽生え、それをキリスト教的古代とも区別した。18世紀以降、ヨーロッパの世界進出の過程で、その古代オリエント認識が進むなかで、それとの対比で「古典古代」の特異性がより意識され、市民共同体の都市国家としての自主独立の存在、古代民主政の展開、私的奴隷所有の発展、精神面での合理的な自由な思考の開花などがその特色とされた。ヨーロッパ中心の「古典古代」を他民族がそのまま受け取る必要はないが、他民族の古典とともに、人類共通の財産の一部であることは否めない。
[土井正興]
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世界史上の古代社会のうちで,西洋の古典を生み,古典を通じて研究され,またその文化が後世の欧米世界にとり古典的とみなされたギリシア・ローマ時代の総称。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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