バビット(読み)ばびっと(英語表記)Irving Babbitt

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バビット」の意味・わかりやすい解説

バビット
Babbitt, Milton

[生]1916.5.10. ペンシルバニア,フィラデルフィア
[没]2011.1.29. ニュージャージー,プリンストン
アメリカ合衆国の作曲家,音楽理論家。フルネーム Milton Byron Babbitt。楽曲の難解さで知られ,12音技法(→12音音楽)と同じくオクターブ内の全 12音を均等に使うだけでなく,音の強弱,音価,音色,音域などを音列技法に基づいて決める作曲技法トータル・セリエリズム(総音列主義)の主唱者。ニューヨーク大学に通いながら,作曲家ロジャー・セッションズに師事した。作曲のあらゆる要素を厳密に制御しようと試みた『シンセサイザのためのコンポジション』(1961),シンセサイザに生と録音ずみのソプラノを重ねた『フィロメル』(1964)のほか,ピアノや弦楽器など通常の楽器を使う作品も手がけた。後期の作品でもセリー技法を用い続け,室内楽から独奏曲,交響曲までさまざまな編成の作品を残した。1938~84年プリンストン大学で教鞭をとる一方,1973年にジュリアード音楽院教授に就任。1965年全米芸術文化協会会員。1982年生涯の作曲活動が評価され,ピュリッツァー賞を受賞した。

バビット
Babbitt, Irving

[生]1865.8.2. オハイオ,デートン
[没]1933.7.15. マサチューセッツ,ケンブリッジ
アメリカの批評家。ハーバード大学卒業後,パリ大学に学び,1894年以後ハーバードでフランス文学と比較文学を講じた。 1920年代アメリカに興った新ヒューマニズム運動の中心的人物で,ルソー流のロマン主義を攻撃し,倫理性と古典的伝統を説いた。主著『文学とアメリカの大学』 Literature and the American College (1908) ,『新ラオコーン』 The New Laokoön (10) ,『ルソーとロマン主義』 Rousseau and Romanticism (19) ,『民主主義リーダーシップ』 Democracy and Leadership (24) など。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バビット」の意味・わかりやすい解説

バビット
ばびっと
Irving Babbitt
(1865―1933)

アメリカの批評家。ハーバード大学教授としてP・E・モア新人文主義ニュー・ヒューマニズム)を唱導し、T・S・エリオットに大きな影響を与えた。人文主義を古典的伝統に基づく倫理性の追求と規定し人道主義と峻別(しゅんべつ)、実利主義を生んだベーコンと漠然たる憧憬(しょうけい)のみを助長したルソーが混乱した精神状況の元凶であると主張した。『ルソーとロマン主義』(1919)が代表作。ほかに『新ラオコーン』(1910)など。

[森 常治 2015年10月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android