ニーマンピック病(読み)ニーマンピックビョウ(英語表記)Niemann-Pick disease

デジタル大辞泉 「ニーマンピック病」の意味・読み・例文・類語

ニーマンピック‐びょう〔‐ビヤウ〕【ニーマンピック病】

Niemann-Pick disease遺伝性脂質スフィンゴミエリン代謝障害。肝臓脾臓ひぞうへの脂質蓄積による、腫大しゅだい発育障害・知能障害を生じる。ドイツ医師、A=ニーマンとL=ピックによって記載された。

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六訂版 家庭医学大全科 「ニーマンピック病」の解説

ニーマン・ピック病
ニーマン・ピックびょう
Niemann-Pick disease
(子どもの病気)

どんな病気か

 スフィンゴミエリナーゼの異常により、スフィンゴミエリンコレステロールがたまり、肝臓、脾臓腫脹(しゅちょう)、肺の浸潤、そして重症の患者さんでは脳にもたまり、精神運動発達の退行(一度獲得した能力を失っていくこと)やけいれんが現れ、寝たきりとなり、死に至ります。

原因は何か

 スフィンゴミエリナーゼの遺伝子異常が原因で、常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)します。

症状の現れ方

 重症型(A型)では、生後数カ月から肝臓、脾臓がはれて巨大化します。3カ月前後からミルクの飲みが悪くなり、吐いたり、下痢をします。1歳ころには、すでにできるようになっていたお座りなどができなくなり、首の座りも不安定になり、周囲に関心を示さなくなって、3歳前後に死亡します。

 軽症型(B型)では神経症状はなく、乳児期から肝臓、脾臓の腫大と呼吸器障害が認められます。

検査と診断

 眼底にチェリーレッドスポット(黄斑部に赤紫色のさくらんぼ様のスポットが認められる)が約半数に認められ、胸部X線写真では浸潤陰影像があり、骨髄(こつずい)細胞に泡沫(ほうまつ)細胞およびリンパ球の空胞化が認められます。リンパ球や培養細胞を用いて酵素活性を測定し、診断します。

治療の方法

 重症型には有効な治療法がなく、軽症型では骨髄移植が有効と報告されています。

病気に気づいたらどうする

 先天性代謝異常症および小児神経を専門とする医師による診察が必要です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニーマンピック病」の意味・わかりやすい解説

ニーマン=ピック病
ニーマン=ピックびょう
Nieman-Pick disease

先天性遺伝性の代謝異常によって,スフィンゴミエリンが細胞内に沈着する疾患をいう。 A.ニーマン (1880~1921) が 1914年に初めて記載した,予後不良のまれな疾患。主として脾臓,肝臓,リンパ節,骨髄などの細網内皮系細胞に沈着して各臓器の腫大がみられるが,腎臓,内分泌腺の実質細胞,筋肉,軟骨細胞などにも沈着が起る。スフィンゴミエリンは,スフィンゴシンと脂肪酸とコリン,リン酸から成る一種のリン脂質で生理的には,神経組織のミエリンに多量に含まれているほか,細胞膜などの生体膜の構成要素になっている。

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世界大百科事典(旧版)内のニーマンピック病の言及

【先天性代謝異常】より

…(3)中性脂肪代謝異常 血漿中の脂肪の増加,組織への沈着が起こる。(4)複合糖質代謝異常 ムコ多糖代謝異常(例,ハーラー症候群),糖脂質代謝異常(例,テイ=ザックス病,ニーマン=ピック病など一群のリピドーシス),糖タンパク質代謝異常(例,シアリドーシス,アイ・セルI‐cell病),の三つに分けられる。蓄積性疾患が多く,知能障害,骨変化を伴って重症心身障害の原因となる。…

※「ニーマンピック病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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