日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌカカ」の意味・わかりやすい解説
ヌカカ
ぬかか / 糠蚊
biting midges
昆虫綱双翅(そうし)目糸角亜目ヌカカ科Ceratopogonidaeの昆虫の総称、またはそのなかの1種。この科の種は体長1.3~2ミリメートルの微小昆虫で、微細なカの意味でヌカカとよばれ、地方によりヌカブユともいう。ユスリカの成虫に似るが、発達した刺咬(しこう)吸血性口器をもち、はねの中脈が普通枝分れし、触角は第1節が丸くて大きく、14節からなり、はねに斑紋(はんもん)をもつものが多いのが特徴。薄明薄暮、日中、夜間活動性のものなどさまざまな生活史をもつ。ヌカカ属Culicoidesのうち人畜より吸血するヌカカCulicoides obsoletusや沿岸性のイソヌカカC. circumscriptusなどが衛生害虫として重要であり、大発生する地方ではその被害は大きい。被害は昼間野外で多く刺咬され、微小で刺咬時の痛みが少ないので気づかないが、後遺症が悪化することが多い。忌避剤を体に塗ると防げる。ニワトリヌカカC. arakawaeはニワトリのロイコチトゾーン症を媒介する。ほかに海岸で人から吸血するトクナガクロヌカカLeptoconops nipponensis、トンボに外部寄生し体液を吸うトンボダニカForcipomyia tokunagai、吸蜜(きゅうみつ)性、捕食性のものなど世界で約4000種以上知られている。
[倉橋 弘]